ただここに春灯一つありにけり
灯りを見て思い出したのは、別役実の舞台だ。別役の舞台には電信柱が一本だけ、裸電球がぼおーっと光っている。別役実はいわゆる不条理劇の作家だ。不条理劇の代表作と言えばベケットの「ゴドーを待ちながら」だが、幸運なことに、ぼくはこれも見ている。別役の劇は舞台装置が簡単でほとんどいらないこと、登場人物も数人と少ないので、高校の演劇部が公演するにはもってこいだったらしい。僕が別役に出会ったのは、芝居からではなく、『虫づくし』と言う一冊の本からだった。そこから始まって、童話集や脚本を読みまくった。


