額縁の中に椎の木椎の花
二日目の吟行の場所は、吉川英治記念館だった。吉川英治は、昭和の大作家だ。『宮本武蔵』や『新平家物語』を始め数々の長編小説をものにした。1962年に71歳で亡くなった。青梅市に吉川英治の記念館があるのは、戦時中、当地の地主だった野村家を譲り受け、住居にしたことに依る。大豪邸の庭の真ん中に樹齢500年とも600年とも言われる大きな椎の木があり、英治はこれが好きで客があると椎の木の下で遇したそうだ。記念館を作る際に、そのことから、眼前の椎の木が窓の額縁の中に収まるような設計にした。とは、ガイドの話である。熱弁をふるうガイドの話を聞きながら、僕は別のことを考えていた。


