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喜寿

俳句フォトエッセイ

カリウムの値を下げよ十二月

「ついに来たか」医者からの指示は「カリウムの値が上がらないように注意してください」というものだった。カリウムは腎臓関わる値の一つだ。どうやら薬の飲み合わせとの関係もあり、腎臓の機能がかなり低下しているらしい。その割には元気で体の怠さもない。しかし参った。あと10年、ビンビンコロリというわけにはいかないかもしれない。栄養相談を受けたらカリウム値が高い食品の表を渡された。「バナナは食べないようにしてください」見るとほとんどの果物や野菜もカリウム値が高い。「これじゃあ何も食べられないではないか」カリウム値が低い代表的な食べ物は白米である。玄米と比べてもカリウム値は3分の1だ。

俳句フォトエッセイ

花桃の庭にて若き爺と爺

二人とも喜寿であるが、まだまだ生きられそうな顔をしているではないか。半年ぶりの出逢いだ。昨年の秋、長野県小海町で「大花野の会」を彼は企画してくれた。恩のある友人だ。大学時代からの付き合いだから、中が抜けているとしても50年以上だ。昨日の夜、電話があった。こちらに出てきていると言う。彼の娘さん一家が南武線の沿線に暮らしている。早速会おうと言う話になった。宿河原に桜を見に行くことにした。宿河原から始まる二ヶ領用水沿いの桜並木は川崎の桜の名所でもある。この数日の「暑さ」で、桜は既に八分ほど咲いている。開花からあっという間だ。「三日見ぬ間の桜かな」とはよく言ったものだ。昼食を何処で取るか?

俳句フォトエッセイ

三月や自分で作るモーニング

心臓の検査は無事にクリアした。しかし、健康問題で無罪放免になったわけではない。主な問題は高血圧と糖尿病だ。母が高血圧だった。そして父は糖尿病の家系だ。両親の良いところもたくさん引き継いだが、同時にこの二つの病気も引き継いでしまったようである。年齢は、古来稀なりの「古希」を通り越し、喜寿も無事に過ぎた。すでに十分に生きたといえる。あとは、おまけの人生だ。もうそろそろ現実に死ぬ準備を始めなければならないと感じている。ほとんど財産はないが、それでも持ち家がある。遺産相続で揉めている家族を嫌というほど見てきた。ぼくが元気なうちに決着をつけておかなくてはならない。

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病院の看板大き六日かな

暮れに近くの医者で市の健康診断を受けた。職を離れて二年。久しぶりの健康診断だ。次の朝その医院から電話がかかってきた。「健康診断の結果でお知らせしたいことがありますから来てください」悪い話に決まっている。いそいそと出かけたら「不整脈があります」それもペースメーカーレベルだと言う。ずいぶん人を驚かす。不整脈なら今に始まった話ではない。一度は負荷心電図もとり、心臓の画像診断までした。その時は「大丈夫」と言われた。しかし、考えてみれば十年も前の話だ。関東労災病院に紹介状を書いてもらった。喜寿を迎えると言うのはこういうことかと思った。そろそろ死ぬ準備をしておかなければならない。

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往く路にさざんか溢るるばかりなり

さざんかは息の長い花である。十一月頃から花をつけ始め、半年もの間咲いていたりする。咲き終わっても葉の緑が美しい。妻のお世話になっているグループホームがこの路の先にある。さざんかはぼくに元気をくれる。妻がグループホームにお世話になるようになってから丸三年が過ぎた。四回目の正月を迎えた。ぼくはこの間、このさざんかの路を二百回近くの往復したことになる。今から考えると最初の一年間は普通に歩けたし、話もそれなりに通じた。二年目になると歩けなくなり、車椅子になった。自分で体を支えるのが難しくなってきた。三年目になって、言葉があまりでなくなってきた。今は、自分で食事をすることも難しくなっている。

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ひたすらに歩きて浸る初湯かな

すっかり温泉にハマってしまった。宮前平の温泉まで行こうかとも考えたが、乗換二回はかったるい。スマホで調べたらあった。綱島だ。ここなら電車で二駅。かつて「綱島温泉」があった。東横線の窓から湯のマーク。見た記憶がある。既になくなったはずだ。新しい施設らしい。綱島の駅からかなり離れている。歩くと30分近くかかりそうだ。「まぁいいや」暇だし、バスでもあるに違いない。綱島の駅はすっかり綺麗になっていた。新綱島という新しい駅までできている。キョロキョロと見回したが、結局バスはわからなかった。ひたすらに歩く。「綱島温泉湯けむりの庄」は想像したよりずっと立派な施設だった。車が次々に吸い込まれてくる。