目を瞑(つぶ)り本を捨てたる神の留守
書棚の二段分ぐらいをやっとの思いで捨てることにした。しかし、本を捨てるのは難しい。新聞や雑誌は誰でも捨てる。同じ印刷物であっても、通りすがりのものだとわかっているからだ。本は違う。一冊の本を書くためにどれだけの苦労があったか。一冊一冊に人生が籠っているのだ。本を捨てることはその人の人生と縁を断つことに等しい。我が家の書斎は父が使っていたものだ。父の頭の中が本棚に展開されている言って良い。立原道造や堀辰雄の全集があり、中央公論の「日本の詩歌」が並んでいる。中村真一郎や杉浦明平の著作、杉山平一など四季派と縁の深い詩人の詩集が山ほどある。

