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江戸時代

俳句フォトエッセイ

草萌ゆる庭の向かふの廃墟かな

庭を覆っている草の名前を調べたら「アメリカンフウロ」と出た。和名だと「風露草」。雰囲気の良い名前だが、建物を今にも飲み込みそうで不気味でもある。お洒落な住宅が、10年も放って置かれるともう廃墟だ。7、8年前、旅行で白樺湖に行ったことがある。朽ち果てた旅館が何軒も放置されており、目を背けたくなった。観光地の廃墟は興醒めである。以前、俳句の授業で仲間と長崎まで出張したことがある。観光の一環で軍艦島に渡った。軍艦島は、かつて炭鉱の島として栄えた場所だ。しかし炭鉱閉山後に無人島になった。上陸して驚いた。鉄骨は剥き出しになり、コンクリートは崩落している。

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彼方までそのまた彼方まで花菜

与謝蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」の句はあまりに有名である。この句の菜の花は、もちろん一本ではない。蕪村の句の背景には各地に広大な菜の花畑が広がっていたという事実があった。アブラナと呼ばれるように菜の花は調理油だけでなく、行灯や燈明などの燃料として、夜を照らす油だった。菜の花は江戸時代のかけがえのないエネルギーだったのである。当時は、それこそ果ても見えないほど菜の花が栽培されていたと想像できる。今、それに最も近いのは千葉のマザー牧場だろう。300万本の菜の花が山を覆う。昭和記念公園など都内にも菜の花の名所がある。その一つが都心にある浜離宮だ。

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冬日向命沸(たぎ)りぬ壺の中

コロナの最中に、この壺に植えられた姫女苑を見て、生きるとは密になること姫女苑正見と詠んだことは、前に述べた。この壺の写真を見ると、更に密だ。命が沸っているかに見える。この植物は、ゼラニウムだろう。一年中花をつけることもあるそうだ。壺の裏側に回ったら、二輪ほど花が開いていた。ゼラニウムは、公園や学校の花壇など、至る所に見ることができる。それは、暑さにも寒さにも強く、日当たりさえ良ければ手入れもほとんど要らないからだ。咲く時期が長く、手入れがいらないとなれば、公園の花壇などに植えるにはうってつけだ。更にゼラニウムは、挿木(挿芽)でも簡単に増やすことができるので経済的でもある。

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神無月お大師さまのさらし飴

川崎大師の表参道・仲見世の入り口に店を構えているのが、松屋総本店や評判堂である。両方とも「飴(あめ)」の店だ。中でも「咳止(せきどめ)飴」が有名だ。厄よけで知られる川崎大師は、正月には多くの初詣客が訪れる。昨年は10年に1度の「大開帳奉修(だいかいちょうほうしゅう)」で、特別な赤札が授与された。私もそれが欲しくて参詣したが、並ぶ人の列に恐れをなして、すごすごと退散した。川崎大師の歴史は古い。創建は1128年というから、900年近く昔だ。武士の平間兼乗(ひらまかねのり)が空海の木像を見つけたことが始まりだそうだ。正式名称の「平間寺」も、ここから来ている。江戸時代になって、川崎大師は大いに栄えた。

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見渡せば白日傘白日傘白日傘

西日本では、既に梅雨明けしたという。関東地方の梅雨明けも7月上旬が予想されるらしい。猛暑の夏がやってくる。最近は毎年猛暑が積み重なってくる。たまったものではないが、ぼくの記憶に残る猛暑は34年前だ。江東区の学校から港区の笄小学校に転勤して1年目だった。笄小学校の笄(こうがい)とはかんざしのことで、江戸時代は職人町だったのだろうと想像される。霞町の交差点の近くだ。秋元康の作詞でとんねるずが歌った「雨の西麻布」のど真ん中にあったのが笄小学校だ。足立、江東と下町を回ってきた自分としては、随分場違いな学校に来てしまったなと思った。ぼくは1年生を担任していた。この年が暑かった。

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二ケ領用水さくらの壁のある如く

東京新聞川崎版4/6「小山正見のかわさき俳句フォト」です。本年度もよろしくお願いいたします。 https://www.tokyo-np.co.jp/article/396657 二ケ領用水さくらの壁のある如く冷たい雨がやみ、気温が上がった。たちまち桜が開花し、あっという間に満開になってしまった。宿河原の二ケ領用水沿いの桜並木は美しい。約300本のソメイヨシノが壁のごとくに空間を埋めている。ソメイヨシノは、接ぎ木で複製されたクローンである。同じ遺伝子を持つので、一斉に咲き一斉に散る。その美しさは、日本人の理想の桜に重なる。接ぎ木や挿し木で大量に栽培することができ、比較的安価。

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境内の春弾けをり終の寺

境内の梅の花は既に満開。隣の夏蜜柑の黄色とマッチして春を演出している。枝の間からは本堂が垣間見える。この寺は、真言宗智山派の延命寺。縁起のいい名前の寺だ。川崎駅から歩いて10分ほどの距離にある。江戸時代に造られた寺院だ。境内は静かで良く手入れがされている。時期になれば見事に咲くであろう紫陽花がすでに小さな芽をつけている。延命寺という同じ名前のお寺は関東にいくつもある。鎌倉の材木座にもあるし、逗子にもある。逗子の延命寺は天平時代に創建されたと伝えられているから歴史が古い。延命寺関係で一番有名なのは、荒川区にある延命院だろう。こちらは日蓮宗の寺院で八百屋お七縁の寺として知られる。