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花壇

俳句フォトエッセイ

雑踏を横目に虫の声虫の声

ふと虫の声が聞こえた。確かに虫の声だ。「こんなところで」街のど真ん中、雑踏の中だ。どうやら、道路ぎわの花壇からのようだ。「都会の真ん中に虫がいるのか」不思議な気分だった。俳句では、「虫」とは秋の鳴く虫のことを指す。鈴虫とかコウロギとかキリギリスのことだ。子供の頃は、虫籠に入れて飼ったこともあった。コオロギの「コロコロ」として柔らかい鳴き声も好きだが、鈴虫の澄み渡った声は何とも言えない。平安貴族は、虫の声を風流なものとして楽しんだ。中国や韓国にも日本と同じような習慣があるらしい。街は人間が支配していると考えたら間違いだ。アスファルトの隙間から草が生え、夜になれば虫の声が聞こえる。

俳句フォトエッセイ

菜の花のすつくと伸びし花壇かな

ここは花壇なのだ。江東区立八名川小学校に隣接する八名川公園である。墨田区や江東区の深川地区には、隣接して公園の作られている小学校が多い。これは、関東大震災の教訓からである。つまり避難所だ。太平洋戦争末期、この辺りは三月十日の空襲で最も被害を受けた。八名川小学校に逃げ込んだ人も多く亡くなった。生き延びた人は、窓から這い出し、プールの水をかぶって助かったという。満月を倍にしたような大きな太陽が朝昇ってきたのが記憶に残っているという話を聞いた。八名川公園には多くの人の遺体が集められ、山になったらしい。今、その八名川公園は花に満ちている。Nさんを中心とする「八名川花の会」のおかげである。