秋の水羽を震はす鳩の群
季語でいう「秋の水」とは、本来きれいで澄み切った水を指す。夏の間はプランクトンなどの微生物が繁殖して、水は濁っているが、秋になると水温が下がる。微生物の繁殖も下火になり、水が澄む。こうした現象を元にした言葉が「秋の水」という季語だ。「水の秋」とひっくり返せば、そうした美しい水をたたえる秋という意味になる。日本語の不思議は言葉に情緒が結びついていることだ。同じ風でも「春風」と言えば何となくうきうきする。逆に「秋風」と言うとほのかな寂しさとか悲しさが感じられる。俳句がたった十七音で詩になり得るのは、こうした日本語の特徴によるものかもしれない。鳩が羽を震わしているのは、実は水浴びをしているからだ。

