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やはらかき緑求めて甲斐信濃

小山正見

海より山が好きだ。山と言うより、樹間と言った方が良い。ハンモックを吊って昼寝をするというイメージである。
夏休みの家族の旅行は、どうしても山の方に向かった。
八ヶ岳の周辺、蓼科、車山高原辺りが多かった。
子どもを連れて赤岳に登ったこともある。確か美濃戸口に車を置いて登ったのだと思う。山頂の御来光は実に美しかった。富士山が雲の上に見えた。
この時、乗っていた車はホンダのシビックのシャトルという車種だった。
その当時は珍しいバンのような乗用車で、後部座席を折り畳むとスペースができた。そのスペースで子どもを寝かせたり、遊ばせたりできたので都合が良かった。(今では不可能だろう)
帰路に事件が起きた。高速道路上で車が動かなくなったのだ。
JAFに来てもらった。
「ファンベルトが切れてますね」
そう言えばしばらく前から「キュルキュル」と妙な音がしていたのを思い出した。
牽引してもらい、近くのインターチェンジまで行くことになった。上り坂は楽ちんなのだが、下りが怖い。エンジンがかからないとブレーキがなかなか効かないのだ。前の牽引している車に追突しそうになる。こんなに汗をかいたことはない。
インターチェンジには用意のいいことに、修理工場の電話番号が目立つように書かれていた。
電話で言われるままに鍵をクルマの中に入れてドアをロック。
タクシーを呼んで墨田区の自宅まで帰った。タクシーの運転手さんが眠たそうだったので仕切りに話しかけたりした。帰り着いた時はぐったりだ。タクシー代は2万円を超えていた。
車は結局廃車にするしかなかった。ホンダの車はファンベルトがエンジンの中に組み込まれているのだ。
その後も何回も出かけているが、交通手段は電車になった。
それにしても甲斐信濃の夏木立はかけがえがない。