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一瞬に雲の消へゆく炎暑かな

小山正見

毎日「暑い!暑い!」と言いながら過ごしている。正に炎暑だ。
空には雲すらない。
思い出したのは15年前のことだ。
ある日突然、大学時代の友人から電話があった。
「モンゴルに行かないか」という誘いだった。
この機会を逃したら、一生モンゴル行くことはないだろう。そう考えて、
「行くよ」
と即答した。ぼくにとっては、人生で2度目の海外旅行だった。
同行は、医者のOさんと放射線技師のIさん、それにぼくである。
ウランバートルには旅行社のKさんが
迎えに来てくれた。Kさんは先日天皇陛下がモンゴルをご訪問された際に陛下と対談されたらしい。
モンゴル旅行はぼくに強烈な印象を与えた。
若い女の子が鞭一つで馬を操り、羊の大群を従えていた。草原の端から出てきた羊の群が丘の向こう側に消えるまで、ずっと眺めていた。壮大な光景だった。
夜の宿舎で星を眺めていたら、一人の男の子が、僕たちの所に話しかけてきた。将来日本に行きたい。だから日本語を勉強したいと言うことだった。
結婚式の場面にも遭遇した。寺院に乗りつけたリムジンから白いタキシードの男が花嫁の手を引いて颯爽と降りてきた。後ろに民族衣装の老人が並んでいた。
馬をを自在に操る女の子、日本語を学びたいと言う青年の貪欲さ、自信に満ち溢れた花婿。モンゴルの青年たちの精悍な姿が眼裏に残った。
草原に馬が7、8頭、頭を寄せ集めて円陣を作っていた。自分たちで陰を作り暑さを避けているのだと言う。
ゲルの中は涼しいが、一歩外に出るとジリジリと焼きつくような暑さなのだ。避けようがない。暑いと言うより「熱い」と言う方が合っている。
空はどこまでも青い。その空に雲ができる。するとその雲が一瞬にして消えてしまうのが驚きだった。湿度が低いのだろう。
日本の空はモンゴルよりじっとりと暑い。
モンゴルの空の熱さが懐かしいほどだ。