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怪しげな店もありけり旱(ひでり)梅雨

小山正見

先週は京都に行ってのんびりしたのに、今週はやけに忙しい。
授業が3日、先生方の研修会が3回。そのうえ、土曜日は中学校俳句部もある。現役時代に戻ったかのようだ。
この日は午前中は川崎市の小学校3年生の授業。午後には亀戸の学校で教員研修会。しかも夜も夜で重要な会議もあった。三連ちゃんだ。
亀戸での研修会は実に面白かった。先生方も乗ってきて、和気藹々の会になった。
最後に句会を開いたら、校長先生の句が図らずも一位になった。
しかし、疲れた。老人性の疲れだ。この辺りが現役時代とは違う。
普通なら、錦糸町から総武線で武蔵小杉まで行くのが一番早い。しかし、武蔵小杉は東横線に乗り換えるのに一駅近く歩く。「やだなぁ」。
他の帰り方もある。市谷か四谷で南北線に乗り換えるのもありだ。新宿まで行って副都心線の乗っても帰れる。地下鉄の路線が張り巡らされているおかげでどんなルートでも我が家に辿り着くことができる。
一番歩かなくても済むルートはどれかと思案を巡らせる。
「そうだ、水道橋がいい」
確か改札を出てすぐのところに都営三田線がある。
改札口を出て、左に曲がり橋を越えれば地下鉄の入口だ。変なもので、この時、橋を越えるということに心理的な抵抗があった。
「改札口は反対側にもあるはずだ」
僕は交差点を渡り、神保町の方向に歩き始めた。しかし、あるはずの地下鉄の入口のマークが見えない。
しばらく歩いて、ようやくもう一つの入口は後楽園球場の側にあることを思い出した。
「仕方ない、神保町まで歩くしかないか」
歩かないつもりが一番長く歩くルートを選ぶ羽目になってしまった。
人生、こんなものか!
この通りを歩くのは久しぶりだ。
ぼくのお気に入りは「いもや」だった。かつとひれかつの2種類しかメニューがないカウンターの店で、安くて美味い。独特の匂いのする揚げたてのかつは、中毒性すらあった。
そこはカウンターはそのままで蕎麦屋に変わっていた。
裏道にあった李白と言う古民家を改装した喫茶店はとっくの昔にない。
飲食店が軒を並べて居るが、中には雀荘もある。今の学生も麻雀をするのだろうか。昔ながらの古本屋もあるが、ものを売らない店舗もある。
面白いと思ったのは、「東京密室」と言う店。狭い店内で何種類ものアドベンチャーゲームができるようなのだ。
「みんなのお寺」というのもあった。
窓に「僧侶と話をしませんか」も漫画付きで書かれていた。
これらを「怪しげな店」と言ってしまっては誠に申し訳ないが、雑然としたこの街の雰囲気をぼくは好きだ。