俳句フォトエッセイ2026.05.15昭和の日箪笥の奥に父の本小山正見先日、箪笥を漁っていたら、奥から父正孝の詩集『雪つぶて』が出てきた。出版される前に手書きでまとめた詩集だ。この詩集は、ぼくの生まれる前、1946年6月に赤坂書店から刊行された。正孝の20代の集大成と言えよう。最後の詩は「夜」という題で、次のような詩である。 夜 小山正孝たくさんの星が窓からキラキラのぞき込んでゐた僕のからだにからみながら あの時 お前は言つた……いつまでも ね いつまでもその調子を思ふと いまも僕の耳元にあたたかい息吹きを感じる胸のあたりの夢のやうなどきどきする音うつとりしてゐる目……いつまでも ね……ああ 僕だつてつと過ぎた一瞬まではつきりと心に浮べ遠く離れた地点の一つの室で深夜にこんなにまでお前が胸をかきむしらうとは読みながら、どきどきしてしまう。今なら珍しくないかもしれないが、この時代に、こんなに率直に性愛を歌う詩を書き、発表したとは。これが、若き小山正孝の真骨頂である。どんな有名な文学者でも、多くは死んだ瞬間から忘れられ始める。中村真一郎ほどの大作家でも、本屋で著作を見つける方が難しい。先日、「詩人の小山正孝さんの息子さんです」とある方に紹介された。その方が「えっ」という顔をされ、「ぼくは愛読者です」とあいさつを返された。「今でも父の詩を読んでくれている人がいるんだ」と嬉しくなった。
先日、箪笥を漁っていたら、奥から父正孝の詩集『雪つぶて』が出てきた。
出版される前に手書きでまとめた詩集だ。
この詩集は、ぼくの生まれる前、1946年6月に赤坂書店から刊行された。正孝の20代の集大成と言えよう。
最後の詩は「夜」という題で、次のような詩である。
夜 小山正孝
たくさんの星が窓からキラキラのぞき込んでゐた
僕のからだにからみながら あの時 お前は言つた
……いつまでも ね いつまでも
その調子を思ふと いまも僕の耳元にあたたかい息吹きを感じる
胸のあたりの夢のやうな
どきどきする音
うつとりしてゐる目
……いつまでも ね
……ああ 僕だつて
つと過ぎた一瞬まではつきりと心に浮べ
遠く離れた地点の一つの室で
深夜にこんなにまでお前が胸をかきむしらうとは
読みながら、どきどきしてしまう。
今なら珍しくないかもしれないが、この時代に、こんなに率直に性愛を歌う詩を書き、発表したとは。
これが、若き小山正孝の真骨頂である。
どんな有名な文学者でも、多くは死んだ瞬間から忘れられ始める。
中村真一郎ほどの大作家でも、本屋で著作を見つける方が難しい。
先日、「詩人の小山正孝さんの息子さんです」とある方に紹介された。
その方が「えっ」という顔をされ、「ぼくは愛読者です」とあいさつを返された。
「今でも父の詩を読んでくれている人がいるんだ」
と嬉しくなった。