俳句フォトエッセイ2025.12.02短日の同窓会の紙コップ小山正見数週間前に小学校時代のクラスメートのTから電話があった。「クラス会をするから来いよ」という誘いだった。数年前、「クラス会は今回で終わりにする」とされていた。しかし、仲の良い数人で時々会っていたらしい。そして今回は「またみんなを集めよう」という話になり、ぼくにも連絡が来たというわけだ。集まったのは10人だった。50人以上いたクラスだ。10人が多いか少ないかはわからないが、何となく懐かしい。皆が持ち寄った食べ物でテーブルの上はいっぱいである。常連のMがいない。「どうしたんだ」と聞くと「死んだ」という答え。クラスで人気者だったIもKも既にこの世にはいなかった。生きて集まっている奴も結構大変だ。最初はひとしきり病気談義。電話をかけてきたTは週3回の透析を受けているという。Oは心臓の手術を2回してステントを入れている。Wは脳梗塞になったが、発見が早かったので助かったと話した。いやはや、ぼくの糖尿病などはかわいいものかもしれない。最近の若者の話になり、どんな奴を採用するかという話題に移った。「きちんと説明もできないから困る」という話から始まったのだが、今なお100人以上の社員を抱える中小企業で現役の社長をしているBの話が面白かった。頭のいい奴も悪い奴も使い物になるのは半分。むしろ、頭のいい奴は7割ぐらいダメというのだ。すると大企業の技術者として勤め上げたCが続ける。「一時、プレゼンテーション能力に長けた奴を重用した時期があった。それが会社をダメにした」「なぜ?」「おしゃべりばっかり」(笑)世の中、学力だけではないのだ。ついでにもう一つ印象に残る話があった。座の真ん中で女王然としてるA子の話だ。彼女は小学校時代からそうで、ぼくなどは怖くてとても近くに寄れなかった。そのA子は、皇室に物品を納めるほどの豊かな商人の子として生まれた。結婚までは順調だったが、旦那が莫大な借金を作って姿を消してしまった。途方に暮れた彼女は、水商売を始め、苦境を凌ぎ一人娘を育て上げた。その過程で新しい伴侶にも恵まれた。ところが「水商売するような女はうちの人間ではありません」と母親に絶縁されたと言う。結局、新しい伴侶を紹介できないまま母親は亡くなった。葬式に赴いた彼女は、玄関まで来て「絶縁したことを取り消してくれなくては敷居を跨ぐことはできない」と詰め寄り跡取りの嫁さんに謝罪させた。そして母親の顔を見て、「この馬鹿野郎!」と大声で叫んだという。「周りは凍りついていたが、私はとてもスッキリした」と晴れ晴れした顔で話した。朝ドラの主人公にでもなりそうな話だ。他にも面白い話があったが、ここでは割愛する。こんなことを書いてしまったので、恐ろしくて次のクラス会の案内が来ても顔を出せる自信がない。
数週間前に小学校時代のクラスメートのTから電話があった。
「クラス会をするから来いよ」
という誘いだった。
数年前、「クラス会は今回で終わりにする」とされていた。しかし、仲の良い数人で時々会っていたらしい。
そして今回は「またみんなを集めよう」という話になり、ぼくにも連絡が来たというわけだ。
集まったのは10人だった。50人以上いたクラスだ。10人が多いか少ないかはわからないが、何となく懐かしい。
皆が持ち寄った食べ物でテーブルの上はいっぱいである。
常連のMがいない。
「どうしたんだ」と聞くと「死んだ」という答え。クラスで人気者だったIもKも既にこの世にはいなかった。
生きて集まっている奴も結構大変だ。最初はひとしきり病気談義。
電話をかけてきたTは週3回の透析を受けているという。Oは心臓の手術を2回してステントを入れている。Wは脳梗塞になったが、発見が早かったので助かったと話した。いやはや、ぼくの糖尿病などはかわいいものかもしれない。
最近の若者の話になり、どんな奴を採用するかという話題に移った。
「きちんと説明もできないから困る」
という話から始まったのだが、今なお100人以上の社員を抱える中小企業で現役の社長をしているBの話が面白かった。
頭のいい奴も悪い奴も使い物になるのは半分。むしろ、頭のいい奴は7割ぐらいダメというのだ。すると大企業の技術者として勤め上げたCが続ける。
「一時、プレゼンテーション能力に長けた奴を重用した時期があった。それが会社をダメにした」
「なぜ?」
「おしゃべりばっかり」(笑)
世の中、学力だけではないのだ。
ついでにもう一つ印象に残る話があった。座の真ん中で女王然としてるA子の話だ。彼女は小学校時代からそうで、ぼくなどは怖くてとても近くに寄れなかった。
そのA子は、皇室に物品を納めるほどの豊かな商人の子として生まれた。
結婚までは順調だったが、旦那が莫大な借金を作って姿を消してしまった。途方に暮れた彼女は、水商売を始め、苦境を凌ぎ一人娘を育て上げた。その過程で新しい伴侶にも恵まれた。
ところが「水商売するような女はうちの人間ではありません」と母親に絶縁されたと言う。
結局、新しい伴侶を紹介できないまま母親は亡くなった。
葬式に赴いた彼女は、玄関まで来て「絶縁したことを取り消してくれなくては敷居を跨ぐことはできない」と詰め寄り跡取りの嫁さんに謝罪させた。
そして母親の顔を見て、
「この馬鹿野郎!」
と大声で叫んだという。
「周りは凍りついていたが、私はとてもスッキリした」
と晴れ晴れした顔で話した。
朝ドラの主人公にでもなりそうな話だ。
他にも面白い話があったが、ここでは割愛する。
こんなことを書いてしまったので、恐ろしくて次のクラス会の案内が来ても顔を出せる自信がない。