春の夜の数珠繰る声や南無阿弥陀仏
きっかけは「オオカミの護符」という一本の映画だった。川崎市宮前区土橋に残るオオカミ信仰の謎を追ったドキュメンタリーである。その中で、すでに住宅地が広がる同区初山の地に今なお「念仏講」が生きていることを知った。昔から続く在家信者の集まりで、地域の信仰と相互扶助の両面を担ってきた。かつては多くの地域で行われてきたが、残っているところは少ない。幸運にもその念仏講の集まりに招かれる日が来た。この日の会場は矢澤英雄さんのお宅だった。家の前には、松の木が見事な枝を伸ばしている。戸口を開けると土間が広がり、まるで民話の舞台にでも迷いこんだようだ。




