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歯医者

俳句フォトエッセイ

春陰や人の歯垢をとる仕事

ガリガリと歯垢をとる音。時計を見ると、治療を始めてから既に1時間経っている。昨年から通っている歯科医院の一室である。好きな人はいないだろうが、ぼくも歯医者が嫌いだ。抜けた歯を20年以上放っておいた。それが、ある事情で歯医者に行かざるを得なくなった。ぼくは、子供の時から歯は丈夫だった。乳歯が頑丈過ぎて、抜けない。仕方なく、歯医者で何本も抜いたこともあった。つい半年前のことだ。一本の歯がグラグラするので歯医者で診てもらったら、なんと乳歯だった。歯の手入れも極めて杜撰だった。歯磨きも朝に一回だけ。しかも、形ばかり。いつの間にか歯磨き粉も使わなくなった。歯の治療が一応終わったところで歯医者に言われた。

俳句フォトエッセイ

冬ざるる朝の歯医者の待合室

今日の朝は寒い。空は曇っている。冬の空だ。朝一番で歯医者に行った。今日は一本歯が入る。子供の時から歯医者には恐怖感がある。歯を何本も抜かれた恐怖が残っているのかもしれない。先日も「あなたは型を取るとウェーとなるからねぇ」と笑われてしまったが、意気地がないのだ。緊張がそのまま顔に出るらしい。恐怖や困難、痛みや気持ち悪さにどう対処できるかは、生きる力そのものだ。10年以上前だが、大腸にポリープがあって切除したことがある。その下剤が飲めなかった。普通の人が日帰りで済むところを病院に二泊した。意気地がないのだ。今まで生きてきたのは運としか言いようがない。ぼくにはもう一つ重大な弱点がある。

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身に入(し)むや七十年の歯の記憶

写真のケースの中には、抜いたばかりの歯が入っている。歯そのものの写真にしようと思つたが、あまりに汚すぎるのでやめにした。何となく歯がグラグラして少し痛みもある。やむを得ず歯医者に行くことに決めた。しかし、どの歯医者に行くか。元住吉には、歯医者が多い。ブレーメン通りだけで20軒の歯医者がある。迷っても仕方ないので、我が家から一番近い歯医者に行くことに決めた。妻が以前お世話になった歯医者さんだ。その時の印象が悪くなかったからもある。すぐレントゲンを撮られた。医者が言う。「乳歯ですね。これは抜くしかありませんね。」びっくりだ。