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ロースかつ

俳句フォトエッセイ

小満の胡麻の香りのロースかつ

目黒の「とんき」など、何度も書いているので、ぼくがとんかつ好きであることは、ご存知かもしれない。この日は、川崎ラゾーナの中にある「かつくら」に行った。気になっていたが、入ったことはなかった。本店は京都の三条にある。関西を中心に最近は海外にまで足を伸ばしている人気の店だ。ラゾーナの「かつくら」も店構えは何となく京都風である。売りは上質な豚肉だ。メニューには「平田牧場の三元豚」などが並び、ぼくの食べた普通のロースかつでも二千円を超えた。味噌汁にもこだわりがあるらしく、オプションで様々な味噌汁を楽しめるようになっている。こんなとんかつ屋は初めてだ。

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とんかつの脂の匂ひ蜆汁

とんかつに味噌汁は付き物だ。具はさまざまだが、ぼくは蜆汁がいい。箸に当たる蜆の感触、コクのあるだしが何とも言えない。とんかつの脂っこさが途端に消える。「蜆汁」は春の季語だ。蜆と言えば、宍道湖、松江である。 NHKの朝ドラ「ばけばけ」で松江はずいぶん賑わっているらしい。俳人辻桃子は「宍道湖の今朝の濁りや蜆汁」と詠んだ。蜆には旬が年に2回あるとされているが、産卵を控える春が1番美味だという。身が肥え始め、味が濃く、だしがよく出るからだ。かつて、神保町に「いもや」というとんかつ屋があった。いつ行っても行列だった。メニューはロースかつとヒレかつの2つだけ。それに大鍋から無造作に掬った蜆汁が付く。

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冬館目黒とんきの流儀かな

ふと「とんき」に行ってみようという気になった。「とんき」とは、目黒にあるトンカツの名店「とんき」のことである。ぼくは、若い時に自由が丘にあった「とんき」に連れて行ってもらったことがある。初めて分厚いトンカツを食べたのがこの店だった。トンカツ好きのぼくにとっては、神保町の「いもや」同様忘れられない名前だ。「いもや」には数えきれないほどお世話になった。しじみ汁が忘れられない味だ。しかし、白状すれば、目黒の「とんき」には行ったことがなかった。目黒駅から権之助坂を下る。左折するとすぐ「とんき」の明かりが見える。古い建物だが、まるで冬館のような装いである。