こぼれても亦こぼれても萩の花
今年は、残暑もあまり感じないままに秋が深まってきた。いつの間にか曼珠沙華が咲き、金木犀の香りが漂ってくる。しかし、秋の花の代表は、やはり萩だろう。草冠に秋と書いて「萩」。字そのものから、萩は秋の花であることがわかる。詩歌の世界では萩は秋の欠かせない題材である。遡れば、万葉集でも萩を詠んだ歌は多いという。山上憶良は、秋の七草の先頭にこの「萩」を挙げている。俳句の世界で有名なのは、『おくのほそ道』での芭蕉と、その旅を共にした曾良の句である。芭蕉は、市振の宿で伊勢に向かう遊女を哀れに思い、同行させてほしいという願いを断りながらも《一家に遊女も寝たり萩と月》と詠んだ。

