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多摩川

俳句フォトエッセイ

秋の暮田園調布の散歩道

ぼくは、田園調布という街を歩くのが好きだ。田園調布といえば、東京でも屈指の高級住宅街である。もちろんここに住むことはどんなに逆立ちしても無理だが、歩くだけならタダである。ぼくは田園調布に強烈な劣等感を持っていた。理由がある。それは、ぼくが義務教育の9年間、いや高校も含めれば12年間田園調布に通い続けていたからである。田園調布小学校、田園調布中学校、田園調布高校というのが、ぼくの学歴だ。親は学芸大学附属小学校に入学させたがったようだが、入れなかったので、田園調布小学校を選んだのだろう。クラスには、頭が抜群に良かった子も多かったし、金持ちも沢山いた。

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秋の薔薇古き駅舎の供のごと

東急線田園調布の駅舎である。「駅舎だった」という方が正確だろう。東急線は今は地下ホームになっており、古いこの駅舎は今はモニュメントである。大豪邸が立ち並ぶ田園調布をぼくは好きだ。駅前の窓の大きなカフェで数時間を過ごし、田園調布の町を散策する。それは、時にはぼくの日課のようにさえなっている。。特に夕暮れ時の田園調布の町は美しい。広い庭の奥の洒落た家屋の窓に灯が灯る。。絵本の中にいるような錯覚に陥る。時には、住宅街の中にある画廊でひとときを過ごす。多摩川台公園まで足を伸ばし、台地から多摩川の流れを見下ろすこともある。しかし、負け惜しみではないが、ここに住むのは大変だろうなとも思う。

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春夕焼またこの場所に来ています

散歩の続きである。「お店の人」というより、「家の人」という感じの女性に掛軸の由来を尋ねてみた。ご先祖がご商売をされていて、東郷家に出入りしていたような話をして下さった。この近くには「奥沢海軍村」というのがある。関東大震災の後、海軍省のある虎ノ門と横須賀の両方に行きやすいというので、海軍士官が住み始めたのがきっかけらしい。現在も当時の面影が残っているという。この地に東郷平八郎!ぴったりだ。ゆるい坂を下ると南国飯店がある。ここで一度小山正孝を顕彰する「感泣亭例会」を開いたことがある。現在のスペース感泣亭ができる前のことだ。南国飯店を見て、自由が丘に行くならあの場所に行かなくてはと思い出した。

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春来たり夢の未来へ飛び立たん

春を思わせる一日、多摩川沿いを散歩していると、ホテルに目がとまった。ただのホテルではない。飛びっ切りおしゃれなホテルだ。ロビーに入ると、アメリカの西海岸にでもいるような気分になってくる。いかにもやり手に見えるビジネスマンが、テーブルでパソコンに向かう。ディスカッションしている若い人たちの姿も。京急大師線の小島新田駅から歩いたら、20分もかかるだろう。バスの便だって良くない。こんな不便な場所に、なぜこんなおしゃれなホテルがあるのか、不思議に思った。名前は?見ると「キングスカイフロント東急REIホテル」とある。キングスカイフロントとは、すごい名前だ。

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何処からかお昼のチャイム春隣

久しぶりの何の予定も入っていない一日。暇なので、多摩川に出かけた。まだ寒の内というのに日差しは春だ。風もない。橋を渡れば府中だ。是政橋の上に立って多摩川の流れを眺める。遠くには二子玉川のビル群らしきものが見える。最近雨が少ないせいか、多摩川の水量は少ない。鴨の一群が水脈を引いて泳いでいる。それ以外、川面はどこまでも静かだ。時折ジョギングをする人やサイクリングの自転車が通る。土手には桜の並木が続いている。桜は既に固い蕾はをつけているに違いない。ここも桜の名所の一つなのだろう。突然、従兄弟に鮎釣りに連れてきてもらったことを思い出した。川崎市には川崎区から多摩区まで七つの行政区がある。

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春近し西海岸にゐるやうな

アメリカ西海岸に行ったことはない。しかし、ここがどんな雰囲気かと問われると、思わずそう答えてしまいそうだ。座っているベンチの隣には、卓球台、貸し自転車が並びスポーツカーがさりげなく置いてある。表示は英語ばかり。ビジネスマンらしき外国人がパソコンのキーを叩いている。雑誌のモデルの撮影だろうか、10人近くの若者が、風のように通り抜けていく。打ちっぱなしの壁にいかにもアメリカ風の写真をやモダンアートが飾られている。なかなかモダンだ。(モダンは古いか笑)ここは、川崎殿町にある東急REIホテルの一階だ。大師線の終点小島新田駅から歩くと20分はかかる。バスで来るのも面倒なほど交通の便は悪い。