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妖艶

俳句フォトエッセイ

花木槿うす紫の濡れそぼる

友の家に行く途中に木槿の花を見つけた。どちらかといえば、少数派の薄紫色。それも半八重だ。雨に濡れてひっそりとした風情があり、つい立ち止まってしまった。木槿は、一般に一日花と言われる。朝咲いて、夕方には花がしぼむからだ。しかし、この木槿は夕闇が迫っているのに一向にしぼむ気配がない。木槿という花を知ったのは、芭蕉の『野ざらし紀行』の句《道のべの木槿は馬にくはれけり》からである。実物を初めて見たのは、江東区の芭蕉記念館である。ここの庭には芭蕉が詠んだ植物が所狭しと植えられており、「馬にくわれたのはこの木槿か」としげしげと眺めた記憶がある。それ以降、町のあちらこちらに木槿の花が咲いていることを知った。

俳句フォトエッセイ

蕊伸ばしいよいよ妖し曼珠沙華

今年の曼珠沙華は例年より遅かった。暑さのせいだと言われている。しかし、その曼珠沙華もそろそろ終わりだろう。夏の間、曼珠沙華は地下茎しかない。秋になると急速に茎が伸び始め、お彼岸の頃には花盛りになるので、彼岸花とも呼ばれる。曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の名前はサンスクリット語から来ている。仏教では、吉事があると天上から降るとされる花の一つとされ、「天上の花」と言う意味があると言う。俳句の世界でも曼珠沙華は様々に詠まれてきた。山口誓子の「突き抜けて天上の紺曼珠沙華」や森澄雄の「西国の畦曼珠沙華曼珠沙華」などは特に有名だ。おめでたい花で天蓋花と呼ばれる一方、死人花とか幽霊花など縁起でも無い異名もある。