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気持ち

俳句フォトエッセイ

卯の花をはじめて知りて傘寿かな

考えてみるとぼくの歳は80に近い。それなのに、これまで卯の花を知らなかった。佐々木信綱の作詞による唱歌「夏は来ぬ」は「卯の花の、匂う垣根に」の歌詞で始まる。卯の花は、初夏を代表する花なのだ。先日、ある方に「これが卯の花」と教えていただいた。白い小花が重なり、息を飲むほどの白だった。昔の人が卯の花を愛でたのがわかるような気がした。「卯の花腐し」という季語がある。せっかく咲いた卯の花を腐らしてしまう雨という意味だ。卯の花の白を見ると、この言葉に込められた恨めしい気持ちが痛いほどわかる。もちろん若い時に卯の花を知れば、それにこしたことはなかったが、生きているうちに出会ったことを奇貨としたい。

俳句フォトエッセイ

アスファルト黒く光らせ穀雨かな

4月の下旬から5月の初旬にかけて降る雨を「穀雨」という。穀雨とは「穀物をうるおす雨」という意味である。この言葉自体は中国前漢時代の思想書、淮南子の「雨生百穀雨」(うりゅうひゃっこく)に由来するとされている。雨こそが命の源泉であるという思想がそこにある。アスファルトに覆われている東京に暮らしていると、穀雨という実感は薄い。「ああ、また雨か」と憂鬱な気持ちになったりするばかりだ。しかし、一歩家の外に出てみると、新緑が美しい。けやきの葉はぐんぐんと緑を増し、いちょうの可愛らしい葉が日に日に成長していく。つつじの赤が一挙にその数を増し、街を彩り始める。これも「穀雨」の恵みに違いない。