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アスファルト黒く光らせ穀雨かな

小山正見

4月の下旬から5月の初旬にかけて降る雨を「穀雨」という。
穀雨とは「穀物をうるおす雨」という意味である。
この言葉自体は中国前漢時代の思想書、淮南子の「雨生百穀雨」(うりゅうひゃっこく)に由来するとされている。
雨こそが命の源泉であるという思想がそこにある。
アスファルトに覆われている東京に暮らしていると、穀雨という実感は薄い。
「ああ、また雨か」
と憂鬱な気持ちになったりするばかりだ。
しかし、一歩家の外に出てみると、新緑が美しい。
けやきの葉はぐんぐんと緑を増し、いちょうの可愛らしい葉が日に日に成長していく。つつじの赤が一挙にその数を増し、街を彩り始める。
これも「穀雨」の恵みに違いない。
鷹羽狩行には《走り根が大樹支へて穀雨かな》の句がある。
穀雨の頃の雨も、ただ鬱陶しいだけではない。アスファルトを濡らすその雨の向こうで、木々はたしかに育っているのである。

都政新報4/21付 「暮らしを楽しむ俳句フォト」29