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渡哲也

俳句フォトエッセイ

くちなしや今では指輪も回るほど

年配の方は、ご存知だろう。渡哲也が歌い、大ヒットした「くちなしの花」である。1974年というから今から50年以上前である。俳句の授業で「くちなし」を取り上げた時、この歌を紹介したらキョトンとされた。ぼく自身、あまりのテンポの遅さに改めて時代の変化を感じざるを得なかった。「歌は世に連れ・・・」と言うが、ぼく自身の人生もまた、時々の歌と共にあったのは確かだろう。橋幸夫の「高校三年生」を修学旅行のバスの中で歌った記憶があるが、好きにはなれなかった。吉永小百合が歌った「寒い朝」。「北風吹ぬく寒い朝も心一つで暖かくなる」は今でも心に残っている。発売の年月日を調べたら、1962年とあった。

俳句フォトエッセイ

総身に金木犀を浴びに行く

金木犀の季節である。例年より若干遅い気がする。金木犀の開花期間は結構短い。せいぜい1週間から10日前後ではないか。それに雨が降るとたちまち散ってしまう。朝起きたら、木の下がオレンジに染まっていたということも度々である。ぼくは金木犀のオレンジ色に惹かれるが、一般的には「香り」の花として認識されているのではないだろうか。後藤比奈夫に木犀の匂ひの中ですれ違ふがある。やはり匂いだ。梔子(くちなし)や沈丁花、ジャスミンなども強い香りを持つ。子どもの時から鼻が悪いぼくでも、これらの匂いは区別がつく。中でも梔子の甘い香りにはうっとりする。渡哲也の「くちなしの花」の歌も大好きだ。

俳句フォトエッセイ

恐らくは未央柳(びようやなぎ)と思ひたり

空はすっかり梅雨の様相になっている。道端の紫陽花がますます色付いてきた。紫陽花の青は、梅雨空に美しく映える。しかし、この時期に美しいのは紫陽花ばかりではない。山帽子や梔子(くちなし)などの花の白も印象的だ。山法師は「白」とばかり思い込んでいたら、葉と同じような薄緑色の花もあると知った。白よりも水浅葱なる山法師正見梔子は、一重も八重もある。白一色も美しいが、朽ちかけて茶色が混ざった花の方が風情を感じる。「くちなしの花」と言えば、ぼくにとっては渡哲也だ。若い子はまるで知らない。