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秋の暮

俳句フォトエッセイ

秋の暮田園調布の散歩道

ぼくは、田園調布という街を歩くのが好きだ。田園調布といえば、東京でも屈指の高級住宅街である。もちろんここに住むことはどんなに逆立ちしても無理だが、歩くだけならタダである。ぼくは田園調布に強烈な劣等感を持っていた。理由がある。それは、ぼくが義務教育の9年間、いや高校も含めれば12年間田園調布に通い続けていたからである。田園調布小学校、田園調布中学校、田園調布高校というのが、ぼくの学歴だ。親は学芸大学附属小学校に入学させたがったようだが、入れなかったので、田園調布小学校を選んだのだろう。クラスには、頭が抜群に良かった子も多かったし、金持ちも沢山いた。

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青春の六十年後の秋の暮

ぼくが通っていた高校、都立田園調布高校の第14期の同期会である、55名が集まった。新宿の地下の薄暗いカフェが会場だった。何人から「おー!小山」と声を掛けられたが、名前を見ても思い出せない。同じクラスで仲の良かった子はいたが、姿はなかった。高校3年間の大きな出来事と言えば、一つは学校のすぐ隣を新幹線が通ったこと。授業中にクラス全員で通過する新幹線を見に行った。もう一つは東京オリンピックがあり、国立競技場で観戦したことである。ぼくは円谷が一万メートルで6位に入賞した場面を目撃している。恋の芽生えがあったのも高校時代だった。浜口(仮名)さんという女の子が好きになった。

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剃る髭に白の混じりぬ秋の暮

鏡で自分の顔をしげしげと眺めた。頭の毛ばかりでなく、顎の髭も相当に白くなっている。毎朝、髭を剃るのは面倒くさい。実に面倒くさい。若い時の無精髭なら、それなりに格好いいが、ジジイの無精髭はみすぼらしくなるだけだ。実は、一度だけ口髭を蓄えたことがある。24歳で結核療養所にお世話になっていた時である。しかし、やってみると髭を全部剃るのより手間がかかる。顎などは剃らなくてはならないし、その上伸ばしている髭も長さをそろえるないと、たちまちだらしなく見える。昔は毛深い方が女性にモテた。胸毛などは男らしさの象徴だった。今は時代が逆転した。毛深い方が敬遠されたりする。髭は現代に似合わない。