たわわてふ言葉似合ひし式部の実
我が家には、小さな庭がある。そこに式部の実がたわわにみのった。毎年式部の実はなるが、こんなに多く、また色鮮やかなのは初めてだ。式部の実は、正確に言えば、紫式部の実であり、「実むらさき」とも呼ばれる。写真はもしかしたら近縁種の「小紫」の可能性もあるが、これも式部の実に違いない。ぼくは、この家で生まれた。6畳、4畳半、3畳の部屋に小さな台所が付いた家だった。戦前に同潤会が建てた戸建て住宅の一つである。戦後すぐという時期を考えると立派な住宅だったと言ってもよい。子どもの頃の記憶を辿ると、庭には桜の木も梅の木もあった。正面には幹のしっかりしたヒマラヤ杉が聳えていた。

