廃屋を喰ひ始めたり青き蔦
散歩の途中である。改めて、しげしげと眺めてしまった。まだ古い家ではない。意匠をこらし、お洒落な一軒家である。誰も住んでいないことは、明らかだ。白く塗られた家を青蔦がぬめぬめと這い上がっていく。飲み込まれてしまうのは、時間も問題であるかのようにも感じられる。廃墟ツアーというのが、あるそうだが、ぼくが見た無惨な廃墟の一つは、長崎の軍艦島だ。軍艦島の名称は、外観が戦艦「土佐」に似ているところからついた。20世紀前半は質の良い石炭が取れることから大いに採掘が進んだ。「端島炭鉱」と呼ばれた。高層の住宅が作られ、1960年頃には、5000人が住んだと言われる。それが、エネルギー政策の転換で廃坑になった。


