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秋冷や渋谷西武の廃墟めく

小山正見

「渋谷西武」が閉店した。これで、渋谷に百貨店は無くなった。渋谷西武百貨店が開店したのは、1968年だ。さらに渋谷パルコが73年に開店している。新しい文化が生み出され、公園通りは、若者のメッカとなった。渋谷が若者の街となったのは、西武の力によるところが大きい。
ぼく自身は、西武のファッションにはまるで興味はなかったが、西武が起点になって作った渋谷の街並みと雰囲気はとても好きだった。
閉店して数日、渋谷西武があった場所を歩いた。まだ、片付けは続いているらしい。建物の中から物品が運び出され、トラックに積み込まれている。
デパートの看板やショーウィンドウは、既に閉鎖されている。閉店からまだ数日しか経っていないのに、白い外壁はすでに煤けている。生き物は死んだ途端に死臭に包まれるが、建物も途端に生気を失くす。
思い出したのは、長崎の軍艦島だ。一度観光で訪れたことがある。炭鉱の町として賑わったその場所は痛々しいほどの廃墟だった。どんなに栄えた場所であってもあっという間に朽ち、たった数十年で見る影もなくなるのだ。
数百年もすれば、土の下に埋まり、数千年、数万年でほぼ姿を消すだろう。
話を飛躍させれば、今は栄えている人類も、この先どうなるものかわからない。
核戦争や原発事故、制御不能のAI。そして地球温暖化。人類の作りだした文明そのものが破滅の引き金になるかもしれない。一方、少子化のように生物としての生命力が衰退する可能性も否定できない。
1億年経てば、人類の生きた痕跡はどこに残るのだろうか。

この句の季語秋

秋冷しゅうれい

秋が深まり、肌にひややかさを感じること。