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門前仲町

俳句フォトエッセイ

街並みの古き記憶や蜃楼

江東区の枝川から豊洲へ向かう道である。ぼくは川崎に移り住む以前、つまり14年前までこの近くのマンションに暮らしていた。地下鉄の豊洲駅からこの道をよく歩いた。まだ工場が残る暗い道だった。ぼくの歴史を遡るとこの道を初めて通ったのは45年前である。第二辰巳小学校への転勤が決まり、門前仲町からバスに乗った。当時はマンションなど影も形もなかった。橋を越えた左側には、日新製糖の工場があった。右手にあったのは石川島播磨の工場群だった。夜になると裸電球の街灯だけがポツンと灯っていた。工場群を過ぎると忽然と現れたのが第二辰巳小学校のある都営団地だった。この道をぼくは10年通った。

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木漏れ日に誘(いざな)われたる小春かな

「小春」は冬の季語である。「春になる前触れ」と捉えている方もいるが、それは違う。冬になりたて、つまり今頃の季語であ。「小六月」も同様な季語だ。写真だけ見ると武蔵野の雰囲気だが、実は江東区だ。清澄庭園の隣の清澄公園である。明治小学校の5年生で俳句の授業をして、午後の句会のために八名川小学校に向かう途中だ。現職時代、この公園はよく通った。この公園を抜けると八名川小学校から門前仲町まで歩いて約20分。更に当時住んでいた塩浜の我が家まで20分。圧巻は、いちょうの散る時期だ。永遠に続くかと思うほどのいちょうの舞い散る様子には思わず足を止めてしまう。

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カレーならCoCo壱が良し日の盛

暑い日になった。門前仲町の駅を降りたら、目の前にカレーのCoCo壱があったので迷わず飛び込んだ。ぼくはカレーライスが好きだ。何なら毎日でもいい。かつては都内の有名だったカレー屋を巡ったこともある。渋谷のムルギー、神保町の共栄堂、東銀座のナイルレストラン、新宿の中村屋etc一番美味いと思った店、名前は忘れたが、もうない。味が良ければ商売に勝つというのでもなさそうだ。CoCo壱に入ったのは生涯2度目だ。最初の時は辟易としたのを思い出した。標準でのご飯の量が何と300グラムもあるのだ。確かにお腹いっぱいにはなるが、ぼくには多すぎる。ご飯の減量をタッチパネルで指示する。

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薄暑めく千客万来露天風呂

江東区立豊洲小学校の俳句教員研修会の日だった。先日届いたダウン誌深川の今号もの特集「海の見える公園さんぽ」を見ていた。魅力的な公園が紹介されている。まずは海の森公園。この3月に開園したばかりだ。広さは東京ドーム13個分というから半端ではない。行ってみたいなと思ったが、些か遠い。豊洲ぐるり公園ぐらいなら、午後からの研修会に間に合いそうだ。このタウン誌深川は、すでに283号。江東区の魅力を余すところなく伝えているダウン誌だ。特集だけではない。新進俳人の西村麒麟氏のエッセイから始まり、地元の町会を巡る記事があると思えば、久染健夫さんの「江戸名所図会」の連載は83回を数える。

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春近し人情深川ご利益通り

実に良い名前だ。「人情深川ご利益通り」とは!ここは、門前仲町。深川不動尊の参道である。約百五十メートルほどの中に四十ほどの商店が軒を並べている。漬物屋もあれば、江戸小物を売る店もある。老舗の煎餅屋は「其角」という名だ。由来はわからないが、おそらく芭蕉の門人であった宝井其角の名をとったのではあるまいか。「日本一硬いせんべい」というのが、この店の売りだ。この日は、近くの江東区立数矢小学校で「俳句の授業」があった。この数矢小学校の授業のある時は、ぼくは必ずご利益通りのカフェでカフェラテを飲む。少し値段は高いのだが、何しろ「ご利益」があり、授業もうまく進むこと間違い無しだからである。