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あの日より七年経ちぬ春の宵

小山正見

2019年3月3日。雨が降っていた。
比留間一成さんを偲ぶ会の写真である。話しているのは詩人の菊田守さんだ。

比留間一成さんは詩人であるが、色々な顔を持っていた。陶芸家でもあり、本職は中学校の教師で、非行問題の権威でもあった。
ぼくが比留間さんを知ったのは20代の頃だ。父の紹介で小平の自宅を訪れた。当時、比留間さんは練馬区教育委員会の指導主事だったと記憶している。

関係が深くなったのは、ぼくが管理職になった40代後半以降だ。彼が関わっていた「日本基礎教育学会」の仕事を手伝い始めたからである。この会は都立研究所の幹部経験者で構成されていた。偉い人ばかりで下働きをする人間が不足していた。仕事を次々と任され、ぼくは、いつの間にか運営の要を担うようになった。
校長になると自分で仕事を調整できるようになる。校長室も便利に使える。毎月の例会を切り回し、「私の基礎教育論」を纏めたり、毎年の大会も準備したりした。比留間さんに助けてもらいながら会を切り盛りした10年間は実に楽しかった。

並行して、父・正孝を顕彰する感泣亭例会でも比留間さんにお世話になった。
代表を引き受けていただいた。困った時には相談にも乗っていただいた。
中学校俳句部に講師としておいでいただいたこともある。
自らを「風おじさん」と称した彼の飄々とした振る舞いはぼくの理想像でもあった。

おしどり夫婦であったが、二人の間にお子さんはなかった。その理由を比留間さんは、

「息子を戦争に行かせたくないから」

と話してくれた。
ぼくは奥様を先に亡くされた比留間さんの詩に涙を禁じ得ない。

遺稿「わたしのくらし」より
冬の日々  比留間一成

まいとし わたしたちは
太陽がいっぱいの部屋で
麦わら帽子をかぶって
本を読みましたね

ことしも あの部屋で
あなたの麦わら帽子をかぶって
あなたの椅子に座って
わたしは絵本を読んでいます

あなたが いなくなるなんて
わたしがひとりになるなんて