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ごきぶりの黒きぬめりに後退り

小山正見

今年は出ないかと思っていたが、やはりでた。最初は風呂場だった。次は和室。そしてリビングにも出た。本当はごきぶりが逃げているのに、ぼくの方が後退りしてしまう。
ごきぶりの黒は、なぜこんなに気味が悪いのか!幾つになっても慣れない。蝶々は美しいと思うのに蛾は気持ち悪いと感じるのと同じかもしれない。
しかしまれにだが、ごきぶりを手で掴める人もいる。小学生に聞いたら、10人に1人位「平気」という子どもがいた。本当だろうか。
殺虫剤から始まり、ゴキブリホイホイなど様々に試してきた。
ドラッグストアに行ったら「ゴキブリムエンダ」を売っていた。テレビで宣伝しているやつだ。思わず買ってしまった。3000円近くする。驚くほど高い。しかし、ごきぶりの恐怖には勝てなかった。
ごきぶりで思い出したのは別役実だ。別役は不条理劇の作家だ。随分舞台も観たし、本も読んだ。ぼくの書棚の一画は別役の本で占められているほどである。
彼の代表作に『虫づくし』がある。この中に「ゴキブリについての考察」の一章があった。
それは、都の衛生研究所でプラスチックを食べるゴキブリの飼育に成功したという荒唐無稽な話だった。
この話にはごきぶりの黒のぬめりについては出てこないが、別役にはごきぶりを可愛らしくする研究についても書いてほしかった。