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シャンソンの溢(あふれ)こぼるる秋の午後

小山正見

都営地下鉄の森下の駅から徒歩1分。音楽喫茶サンメイトである。
この日はオーナーの桜彩さんのソロコンサートだった。
ご招待を受け、参加させていただいた。桜彩さんのコンサートにはコロナのずっと前に伺ったことがある。その時は上野で、妻と二人だった。
伴奏のピアノは岩崎大輔さんだ。若くして米国ボストンのバークリー音楽院
に留学された。帰国後はジャズを中心に演奏活動をされ、ポピュラーの作曲、編曲をはじめ、幅広い活躍をされた方だ。11月の岩崎さんのディナーショーのチケットは既に完売だという。
コンサートは、その岩崎さんの「枯葉」の演奏から始まった。一瞬で聞き惚れてしまった。
桜彩さんは、エデット•ピアフやシャルルアズナブールのシャンソンを中心に1時間ほとんど休みなしに歌われた。何しろ声量が素晴らしい。部屋中が振動するかの如く彼女の歌声が響き渡った。
中にぼくの好きなファドの歌もあった。ファドはポルトガルの民謡だが、何となく演歌に似ている。
アマリア・ロドリゲスの歌ったこの歌は、確かちあきなおみが「霧笛」という題で歌った曲だと思う。「待夢」というアルバムの中にある。
ぼくは数限りなく聞いた懐かしい曲だ。
実は、桜彩さんはぼくが八名川小学校に勤務していた頃の保護者であった。
ある時校長室にいらして
「子どもたちに読み聞かせをしたいのだけど」
と言われた。こんな嬉しいことはない。二つ返事でOKした。次の年からは読み聞かせボランティアを募ることになった。20人を超える方々が応募してくださり、週一回全学級での読み聞かせが始まった。
この読み聞かせは20年近く後の現在も続いていると言う。
桜彩さんのお陰で八名川小の歴史的な特色が作られたのである。ぼくは桜彩さんに足を向けて眠れない。
最高だったのは桜彩さんの歌が実に楽しそうだったことだ。聞いてたぼくも楽しくなった。心が弾んだ。
桜彩さん、良い時をそして良い時代をありがとう!