俳句フォトエッセイ2026.02.24春寒し奇妙奇天烈池袋小山正見世の中は、ぼくの知らないうちにどんどん変わっている。その一端を先日池袋で感じた。夕刻、急にとんかつが食べたくなった。スマートフォンで「池袋、とんかつ」と検索したら、「丸七池袋店」が出てきた。居た場所のすぐそばだ。「経路案内」に沿って歩くと、Erola池袋というビルの6階だった。列に並んでしばらく待った。人気店なのだ。ぼくの前に並んでいた男の子は唇にピアスを3つもつけていた。女の子の髪は完全脱色だった。こうした光景にはもう慣れた。かつそのものはおいしかったが、煮ていないかつ丼のようだった。ぼくは、普通のかつ定食の方が好きだ。何回か食べれば好きになるのだろうか。そうとも思えない。このビルに「いったいどんな店が入っているのだろう」興味があったので、エスカレーターで一階ずつ降りてみることにした。と、ある階にかなり広い喫茶店があった。ほぼ満員に近い。よく見ると「梟書茶房」とある。読書喫茶なのだ。驚いたのは、簡単な紹介だけ書かれた本がずらりと本棚に並んでいたことだ。これは、「本の賢者」が選んだ本だが、袋に入っているので、何の本だかわからない。中身もわからず本を選ぶことは、ぼくには無理だが、若い人には、そちらの方が面白いのかもしれない。手にとったが、どうしても選ぶ気にはならなかった。さらに下に降りると、「CCFO LIA BOOKS」とある。「あ、本屋がある」と中に入った。棚には、「語彙力図鑑」や「品格語辞典」などという言葉に関係する本も並んでいる。面白そうな品揃えだ。しかし何だか雰囲気が違う。TRPGと呼ばれるゲームの専門店だった。同じ言語辞典に辿り着くとしてもルートがまるで違うのだ。普通のかつ定食を食べ、自分で本を選び、小説や評論を読む中で言語に興味を持ってきた。しかし、このビルの中には、全く違う社会があった。僕にとって池袋には立教大学構内の美しいクリスマスツリーのイメージぐらいしかなかった。もしかしたら池袋はいつの間にかぼくの思いもつかない街になってしまったのかもしれない。しかし、彼らから見れば、僕の方こそ奇妙奇天烈に見えるのだろう。ビルを出ると若者の群だ。その中で僕だけが弾き出されているかのように感じた。ぼくは急いで池袋を離れた。
世の中は、ぼくの知らないうちにどんどん変わっている。
その一端を先日池袋で感じた。
夕刻、急にとんかつが食べたくなった。スマートフォンで「池袋、とんかつ」と検索したら、「丸七池袋店」が出てきた。居た場所のすぐそばだ。「経路案内」に沿って歩くと、Erola池袋というビルの6階だった。
列に並んでしばらく待った。人気店なのだ。ぼくの前に並んでいた男の子は唇にピアスを3つもつけていた。女の子の髪は完全脱色だった。こうした光景にはもう慣れた。
かつそのものはおいしかったが、煮ていないかつ丼のようだった。ぼくは、普通のかつ定食の方が好きだ。何回か食べれば好きになるのだろうか。そうとも思えない。
このビルに「いったいどんな店が入っているのだろう」
興味があったので、エスカレーターで一階ずつ降りてみることにした。
と、ある階にかなり広い喫茶店があった。ほぼ満員に近い。よく見ると「梟書茶房」とある。読書喫茶なのだ。
驚いたのは、簡単な紹介だけ書かれた本がずらりと本棚に並んでいたことだ。これは、「本の賢者」が選んだ本だが、袋に入っているので、何の本だかわからない。
中身もわからず本を選ぶことは、ぼくには無理だが、若い人には、そちらの方が面白いのかもしれない。手にとったが、どうしても選ぶ気にはならなかった。
さらに下に降りると、「CCFO LIA BOOKS」とある。
「あ、本屋がある」
と中に入った。棚には、「語彙力図鑑」や「品格語辞典」などという言葉に関係する本も並んでいる。面白そうな品揃えだ。しかし何だか雰囲気が違う。TRPGと呼ばれるゲームの専門店だった。同じ言語辞典に辿り着くとしてもルートがまるで違うのだ。
普通のかつ定食を食べ、自分で本を選び、小説や評論を読む中で言語に興味を持ってきた。しかし、このビルの中には、全く違う社会があった。僕にとって池袋には立教大学構内の美しいクリスマスツリーのイメージぐらいしかなかった。もしかしたら池袋はいつの間にかぼくの思いもつかない街になってしまったのかもしれない。
しかし、彼らから見れば、僕の方こそ奇妙奇天烈に見えるのだろう。ビルを出ると若者の群だ。その中で僕だけが弾き出されているかのように感じた。ぼくは急いで池袋を離れた。