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エスカレーター

俳句フォトエッセイ

夏の果てぼくの時代が朽ちていく

よく寝ているはずなのに、体が重いと感じる日が続く。今まで、エスカレーターには乗らず、階段を上ることを旨としていたが、とてもダメだ。階段を上ると、太腿の裏が痛い。息が上がる。これが急に襲ってきた暑さのせいだといいのだが。湯島に出た。ぼくは、いろいろなところに行きつけの喫茶店を持っている。酒を呑まない代わりのコーヒーの店だ。湯島には「フレンチヴォーグ」という店があった。シックで白い壁の落ち着いた店だ。深煎りの珈琲がうまい。トイレが他と共用でわざわざ鍵を借りて入った。店の前まで行って、はじめて無くなっていることに気づいた。ドアだけは昔のままだ。内装は取り払われ、廃墟のように広がっている。

俳句フォトエッセイ

人がみな我よりはやく歩く春

石川啄木の歌集『一握の砂』に《友がみな我より偉く見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ》の一首がある。句はこのパロディでもあるが、実感でもある。朝、我が家から東急の元住吉駅まで、歩く。行き慣れた道だ。しかし、最近気づいたことがある。人が皆ぼくを抜いていくのだ。ぼくとしては、一生懸命に歩いているつもりなのに、平気で追い抜かす。足が短いのか、回転が遅いのかどんなに頑張っても追いつかない。病院の栄養相談に行くと、筋肉量の測定器に乗せられる。結果、足の筋肉量が標準以下だと言われた。駅では、エスカレーターに乗らず歩いて上がるように努めてきた。歩く量は以前より減ったとはいえ、平均9千歩は歩いている。

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春寒し奇妙奇天烈池袋

世の中は、ぼくの知らないうちにどんどん変わっている。その一端を先日池袋で感じた。夕刻、急にとんかつが食べたくなった。スマートフォンで「池袋、とんかつ」と検索したら、「丸七池袋店」が出てきた。居た場所のすぐそばだ。「経路案内」に沿って歩くと、Erola池袋というビルの6階だった。列に並んでしばらく待った。人気店なのだ。ぼくの前に並んでいた男の子は唇にピアスを3つもつけていた。女の子の髪は完全脱色だった。こうした光景にはもう慣れた。かつそのものはおいしかったが、煮ていないかつ丼のようだった。ぼくは、普通のかつ定食の方が好きだ。何回か食べれば好きになるのだろうか。そうとも思えない。

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梅雨明を今か今かと石畳

写真をよく見ると石畳の色が違うのがわかるだろうか。色の違う部分は、つい先日掘り返して工事をしていた箇所である。しかし、一日で元の石畳に戻っている。実はカッターで切れ目を入れて石畳調にしているのだ。丈夫だし、見た目も良い。ブレーメン通りがこの石畳に至るまでには紆余曲折があったが、ここでは省く。この道を通って、ぼくは駅へと向かい仕事に出かける。しかし、最近「老いた」と感じることがある。一つは歩行のスピードだ。ぼくは懸命に歩いているつもりなのに、隣のスマホを見ながら歩いている兄ちゃんに敵わない。若い女の子にもどんどん抜かされる。次は階段だ。