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来し方を辿る歌なり鶴来る

小山正見

松井信幸著『昭和歌謡ものがたり』(アルソス新書)である。この本は、先日紹介した『もう一度聞きたいGS・フォーク・ニューミュージック 読む昭和の曲63』の姉妹編である。
Amazonでも購入することができる。
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今年の上半期に読んだ本の中で一番印象に残ったのがこの本だった。
それはぼくの年齢とも関係しているかもしれない。
昔が懐かしく、自分の人生を振り返ってみる歳になったということだ。
この本には、昭和30年代から昭和の終わりまでの歌謡曲とそれにまつわる挿話が網羅されている。
その時代はそっくりぼくの前半生と重なるのだ。
「歌はよにつれ世は歌につれ」という言葉があるが、人生もまた、歌につれているのである。尊敬する友人でアイデアマラソンの創始者の樋口健夫氏は一曲づつYouTubeで歌を聴きながら読んだと言う。
この本の真骨頂は、ヒット曲にまつわる作曲家や作詞家、歌手の人生に触れ、歌が生まれた経緯や裏事情を現場からの視点で実によく書かれていることにある。
読みながら「こんなことがあったのか」「そういう事情だったのか」と思うことばかり。しかも、それが自分の人生の節々と重なっているのだから、面白くないはずがない。
歌謡曲がどのように作られるのか、その創作の秘密にも触れることができる。
細川たかしが歌った「矢切の渡し」が
乗客の減少で廃止の危機にあった葛飾と松戸を結ぶ「矢切の渡し」を存続させたいという作詞家石本美由紀の思いから出来上がったとは!
収録されている歌は58。一編一編に
こうしたエピソードが語られる。
読んで決して損のない本である。