俳句フォトエッセイ2025.08.12緑陰を街に広げる本屋かな小山正見 JR南武線の鹿島田駅に直結する北野書店。社長の北野晋太朗さんにお目にかかった。驚いたのはその若さだ。弱冠23歳。療養中の父を助け、社長の大役を務めているという。 私の住んでいる元住吉では昨年、町の本屋が姿を消した。全国的に見れば、この20年間に書店の数は半減している。川崎市内でも、中小規模の書店が次々と店を閉じている。寂しい限りだ。本屋がなくなることは、文化の火が消えることに通じる。時代の趨勢(すうせい)とはいえ、看過できない。 北野書店も店頭販売だけでは厳しい状況だが、前向きな姿勢は崩さない。地域にある川崎総合科学高校と協力して、この冬に店舗をリニューアルする予定だ。「アカデミックな本屋にしたい」と、構想を語る若き社長の目は輝いている。 北野書店の歴史は古い。創業は、戦後間もなくの1947年。「地域循環・本と人をつなぐ」を標榜(ひょうぼう)し、一貫して地域密着の姿勢を貫いてきた。 川崎市ゆかりの作家・かこさとしさん(1926~2018年)との縁を深め、展覧会を企画したり、専用コーナーを設けたりしてきた。かこさんはだるまちゃんシリーズで名高い児童文学者だ。北野書店の正面には「集まれ!だるまちゃんのおともだち」の大看板が掲げられている。 03年に亡くなった民話作家の萩坂昇さんが市内各地の民話を集めた「かわさきのむかし話」の復刻版を出版したのも、北野書店の仕事だ。町の本屋さんが出版も手がけ、川崎の歴史と文化を支えようとしている。頭が下がる。 北野書店のマスコットキャラクターは、地元の下平間小学校の児童が考案した「キタノらいおんくん」である。これからも地域に根ざし、雄々しくほえ続けてほしい。東京新聞川崎阪7/27付です。https://www.tokyo-np.co.jp/article/424160
JR南武線の鹿島田駅に直結する北野書店。社長の北野晋太朗さんにお目にかかった。驚いたのはその若さだ。弱冠23歳。療養中の父を助け、社長の大役を務めているという。
私の住んでいる元住吉では昨年、町の本屋が姿を消した。全国的に見れば、この20年間に書店の数は半減している。川崎市内でも、中小規模の書店が次々と店を閉じている。寂しい限りだ。本屋がなくなることは、文化の火が消えることに通じる。時代の趨勢(すうせい)とはいえ、看過できない。
北野書店も店頭販売だけでは厳しい状況だが、前向きな姿勢は崩さない。地域にある川崎総合科学高校と協力して、この冬に店舗をリニューアルする予定だ。「アカデミックな本屋にしたい」と、構想を語る若き社長の目は輝いている。
北野書店の歴史は古い。創業は、戦後間もなくの1947年。「地域循環・本と人をつなぐ」を標榜(ひょうぼう)し、一貫して地域密着の姿勢を貫いてきた。
川崎市ゆかりの作家・かこさとしさん(1926~2018年)との縁を深め、展覧会を企画したり、専用コーナーを設けたりしてきた。かこさんはだるまちゃんシリーズで名高い児童文学者だ。北野書店の正面には「集まれ!だるまちゃんのおともだち」の大看板が掲げられている。
03年に亡くなった民話作家の萩坂昇さんが市内各地の民話を集めた「かわさきのむかし話」の復刻版を出版したのも、北野書店の仕事だ。町の本屋さんが出版も手がけ、川崎の歴史と文化を支えようとしている。頭が下がる。
北野書店のマスコットキャラクターは、地元の下平間小学校の児童が考案した「キタノらいおんくん」である。これからも地域に根ざし、雄々しくほえ続けてほしい。
東京新聞川崎阪7/27付です。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/424160