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俳句フォト

俳句フォトエッセイ

官女ゐて衛士(ゑじ)までもゐて雛飾り

3月3日は雛祭りである。ぼくは雛祭り知らずに育った。娘を授かった時、祖母が木目込の雛飾りを贈ってくれた。人形の顔に見惚れた。つくづくと「家庭っていいな」と思った。写真は京王プラザホテルのロビーの段飾りである。三人官女や衛士(ゑじ)まで揃っている。娘の雛と同じ真多呂作だ。しかし、5段や7段の立派な段飾りを置ける家は東京ではほとんどないだろう。人形問屋の久月に行ってみたら、陳列棚のほとんどが男雛女雛だけの親王雛で占められていた。東京の住宅事情では致し方ないところだ。関東では千葉勝浦のビッグ雛まつりは壮大である。家庭で飾れなくなった雛人形もここに生きている。

俳句フォトエッセイ

暖かや我に戻りぬハンチング

春一番の吹いた日、ぼくは南野川ふれあいの森にいた。Oさんから教えていただいた場所だ。Googleマップで調べたら地下鉄グリーンラインの東山田から歩く道が紹介された。それから先は3/1付東京新聞の「小山正見のかわさき俳句フォト」に記した通りだ。帰りのルートを調べたら武蔵小杉までのバスがあることがわかった。中原で降りれば、妻のお世話になっているグループホームまで近い。バスはすぐ来た。東急バスである。中原でバスを降りて気がついた。何となく頭が寒い。「あっ、忘れた」その日被っていたハンチング帽をバスに忘れたのだ。スマホで東急バスの忘れ物センターを検索したら、すぐに電話番号がわかった。

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春一番てんとう虫の動き出す

先月、東高根森林公園を紹介したら、読者から「ここもいいわよ」と教えていただいたのが南野川ふれあいの森だ。スマートフォンで行き方を調べ、横浜を走る地下鉄グリーンラインの東山田駅から歩くルートで向かった。駅を降り、ひたすら住宅地の間を歩く。途中にお店もコンビニも見当たらない。中学校のグラウンドでは、野球の試合やサッカーの練習が行われている。よく整備された公園を横切って坂道を下ると有馬川の細い流れに出た。この川を渡ると、ようやく川崎市宮前区に入る。ふれあいの森は急坂を上り切ったその上にあった。疲れて思わずベンチにへたり込む。春一番の強い風が幹を揺らしている。風の音だけが森を通り抜ける。

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とんかつの脂の匂ひ蜆汁

とんかつに味噌汁は付き物だ。具はさまざまだが、ぼくは蜆汁がいい。箸に当たる蜆の感触、コクのあるだしが何とも言えない。とんかつの脂っこさが途端に消える。「蜆汁」は春の季語だ。蜆と言えば、宍道湖、松江である。 NHKの朝ドラ「ばけばけ」で松江はずいぶん賑わっているらしい。俳人辻桃子は「宍道湖の今朝の濁りや蜆汁」と詠んだ。蜆には旬が年に2回あるとされているが、産卵を控える春が1番美味だという。身が肥え始め、味が濃く、だしがよく出るからだ。かつて、神保町に「いもや」というとんかつ屋があった。いつ行っても行列だった。メニューはロースかつとヒレかつの2つだけ。それに大鍋から無造作に掬った蜆汁が付く。

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久月は撮影OK雛飾り

都政新報の「暮らしを楽しむ俳句フォト」の掲載は週に一回。毎週火曜日だ。東京新聞の方は月に一度だから余裕があるが、毎週というのは結構忙しい。カレンダーを見たら3月第1週の火曜日は3日、ひな祭りの日だと気づいた。「だったら雛人形だ」雛人形と言えば久月である。迷わず、浅草橋に向かった。浅草通りに面した本店には「人形問屋久月総本店」とある。2月も半ばを過ぎだ。客はまばらだが、赤ちゃんを抱いているお母さんもいる。店内は雛人形一色だ。しかし、七段飾りなどの本格的なものは、申し訳程度に置いてあるだけだ。売れ筋は親王飾りなど、男雛と女雛が並んでいるシンプルな雛である。段の多いものもほとんど全てがミニサイズ。

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カプセルの中身は何ぞ地虫出づ

何やら工事が始まっている。元住吉駅のすぐそば、青山フラワーマーケットの目の前だ。かつてセキモト写真店のあった場所である。ずっとシャッターが閉まったままだった。「何ができるんだろう」興味津々で毎日眺めていた。看板が付いて、いつの間にか開店している。「カプセル薬局」とある。「なんだ、また薬屋か」とがっかりしていたが、様子がおかしい。「この風景、どこかで見たことがある」新宿サブナードの地下にもあった。ゲームセンターの中でも見た、あのカプセルトイだ。店の中に店員は一人もいない。カプセルトイの白い箱が並んでいるだけだ。2階にも上がってみた。ぎっしりと白い箱が並んでいる。

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白樫の 林を抜けて 春の風

東高根森林公園は、川崎市内にある唯一の県立公園である。JR南武線の武蔵溝ノ口駅からバスで10分ほど、森林公園のバス停で降りたらすぐだ。パークセンター脇の階段を217段、息を切らしながら上るとピクニック広場に出る。けっこうきつい。ちょっとした登山をした気分だ。晴れて天気が良ければ富士山がきれいに見えるはずだ。山あり谷ありの森林公園の中央に広大な芝生の広場が広がっている。親子連れが、のどかにバドミントンに興じていたが、足元には、古代の竪穴住居跡が60以上も埋まっているという。そう考えるとちょっとしたロマンである。芝生の向こうは白樫(シラカシ)の自然林だ。触ると白樫の幹は硬い。

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凛と立つ白一色の水仙花

水仙は1月から2月にかけて咲く花の代表格だ。季語としては冬に分類されているが、2月に入ってもしっかり花をつけている。水仙は原種だけで50種類、園芸種になると1万種以上あるというから驚きだ。水仙の原産地は地中海周辺である。日本に入ってきたのは平安時代より前というから、もうすっかり日本の風土に定着している。先日、散歩の途中に真っ白な水仙を見つけた。ペーパーホワイトという品種である。「紙のように白い」ことからこの名前がついた。水仙の学名は「ナルキッソス」である。これは水に映った自分の姿の美しさに見惚れて、命を落としたギリシャ神話に出てくる美少年の名前だ。ここからナルシズムという心理学用語が生まれた。

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奉納の絵馬の重なり梅の宮

東京には梅の名所がたくさんある。しかし、その代表格は湯島天神だろう。ここは学問の神様菅原道真を祀る神社である。「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」の歌はあまりにも有名である。メトロ千代田線の湯島駅から「学問の道」と書かれた懸垂旗を辿ると天神石坂下に出る。ここを登ると湯島天神の境内だ。折からの受験シーズン。平日でも訪れる人は多い。高校生らしいグループもいれば、老夫婦の姿もある。境内の奉納棚は合格祈願の絵馬が山盛りだ。本人が書いたものも、両親の願いを込めた絵馬もある。中には予備校の先生方の絵馬もあった。梅の花がこれから開く。これでみなが合格できれば何も言うことがないのだが。

お知らせ

江東区報2月号に主宰・小山正見と大久保区長の対談「石田波郷」が掲載されました(2月1日)

と、大久保ともか江東区長による対談が掲載されました。​今回の対談は、戦後の大俳人であり、江東区にゆかりの深い「石田波郷」をテーマに行われました。砂町にある砂町文化センター(石田波郷記念館)にて、波郷の句やその生涯、江東区との関わりについて深く語り合っています。​対談の詳細は、江東区公式ホームページよりお読みいただけます。ぜひご覧ください。​▼江東区報(テキスト版)はこちら