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加藤楸邨

俳句フォトエッセイ

いわし鯖ひつじまでゐて秋の雲

今年の9月は雨ばかりだった。統計によれば、東京では平年の3倍近い雨が降ったという。秋といえば「天高し」の季節である。夏の湿った空気が去り、秋晴れの透き通る空の美しさが際立つ季節である。雲の形も夏とは違う。夏の雲の代表は入道雲だが、秋には鰯雲や鯖雲や、一つ一つの塊が大きく見える羊雲などのうろこ状の雲が現れる。うろこ状の雲の並びには、雲の上下の温度差によって起こる小さな対流が関わっているという。俳人の森澄雄はこうした秋の雲について《生涯にいくたびか全天鰯雲》と詠んだ。また加藤楸邨は、《鰯雲人に告ぐべきことならず》の句を残している。いずれも人生や生き方について考えさせられる俳句である。

俳句フォトエッセイ

満を持して天を向きたる花水木

桜の季節が終わりに近づいてきたと思ったら、それを待っていたかのように花水木がすでに小さな蕾をほどき始める。桜の花が下を向いて咲くのに対して、花水木の花は天を向いて咲く。最近はぼくの歩く道にも花水木をよく見かける。春の開花はもちろん、秋の紅葉も美しく、一年を通して目を楽しませてくれる。歩道を壊しにくいおとなしい根、葉が横に広がり、歩道に柔らかい影を作るのも好ましい。加藤楸邨は《一つづつ花の夜明けや花みずき》と詠んでいる。花水木はアメリカ原産でアメリカヤマボウシとも呼ばれる。こんな歴史がある。ワシントン、ポトマックのほとりの見事な桜をご存知だろう。

俳句フォトエッセイ

蒼天に渦を巻きたる秋の雲

妻がお世話になっているグループホームの前である。既に4年が過ぎた。ぼくはこの土地を200回以上見続けてきたことになる。最初は畑でかなりの部分で作物が作られていた。昨年はキャベツが二畝植えられていたが、収穫されずに菜花の茎が伸び放題になっていた。その土地を半分売ったらしい。白い膜が張られ、工事が始まったようだ。住宅かマンションだ建つ気配が強い。大きなクレーンが入っているのを見ればマンションの公算の方が高いだろう。それにしても久しぶりの秋らしい空だ。湿度が下がったということだ。空の奥まで見通せるかのようだ。空に見える雲は、おそらく巻雲だろう。

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楸邨の思ひたゆたふ春の雨

楸邨とは、俳人の加藤楸邨のことである。30代だったと思う。ぼくは楸邨の鮟鱇の骨まで凍ててぶち切らるを知り、衝撃を受けた。俳句との出逢いはこの句だったと記憶している。NPO法人季語と歳時記の会が発行する『きごさい』の最新号が届いた。季語と歳時記の会は「きごさい全国小中学生俳句大会」の運営母体である。尊敬する西川遊歩さんは、この会の副代表で共に子どもの俳句大会を運営してきた同志だ。現在は大岡信研究会の会長をされているが、一世を風靡した『地球の歩き方』の産みの親であり、若き時代にはバックパッカーとして、世界中を歩き回った伝説の人だ。