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いわし鯖ひつじまでゐて秋の雲

小山正見

今年の9月は雨ばかりだった。統計によれば、東京では平年の3倍近い雨が降ったという。
秋といえば「天高し」の季節である。夏の湿った空気が去り、秋晴れの透き通る空の美しさが際立つ季節である。
雲の形も夏とは違う。夏の雲の代表は入道雲だが、秋には鰯雲や鯖雲や、一つ一つの塊が大きく見える羊雲などのうろこ状の雲が現れる。
うろこ状の雲の並びには、雲の上下の温度差によって起こる小さな対流が関わっているという。
俳人の森澄雄はこうした秋の雲について《生涯にいくたびか全天鰯雲》と詠んだ。また加藤楸邨は、《鰯雲人に告ぐべきことならず》の句を残している。いずれも人生や生き方について考えさせられる俳句である。
確かに雲を題材にした言葉は色々ある。例えば「行雲流水」は、雲や水のように自然の成り行きに身を任せよという意味だし、「雲外蒼天」は、厚い雲の上に出れば青空が広がっているという希望を表している。
先日、晴れた空にうろこ状の雲が並んでいるのを見つけた。
あの雲を眺めていると、人生の何かが見えてくるかもしれないと思った。

都政新報10/6付 「暮らしを楽しむ俳句フォト」50

この句の季語秋

秋の雲あきのくも

澄んだ秋空に浮かぶ雲。いわし雲やうろこ雲など。