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境内

俳句フォトエッセイ

宵闇の路地を曲れば湯の匂ひ

【銭湯紀行】22入谷白水湯入谷と言えば、まず頭に浮かぶのは「恐れ入谷の鬼子母神」というユーモラスな言葉だ。鬼子母神は安産や子育ての神様だ。雑司ヶ谷にも鬼子母神がある。ぼくはその境内での赤テントの公演、唐十郎作の『盲導犬』を見たことがある。満員のテントの中にシュールな緊張感が走っていた。それはさておき、入谷である。古い下町が残っている。建て直された大正小学校にも窓の形などに昔のモダンが色濃く残っているし、昔の建物のままの酒屋さんも健在だ。地域の稲荷信仰も廃れたようには見えない。その中に、現代的な和風を売りにした民泊施設が点々と生まれている。白水湯は、そんな街角を曲がった場所にあった。

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手を握り祭の夜を彷徨す

句集『大花野』に収録したこの句を詠んだのは、今から7年前のことだ。色々な気持ちが交錯していた。お祭りに出かけたら楽しいだろうな。妻も喜ぶだろう。しかし大丈夫かな。元住吉の駅前にある住吉神社に出かけた。あたりは屋台が店を出し、人で溢れていた。昔ながらの焼きそばや射的もあった。しかし、予想したよりずっと人が多い。妻を迷子にしたら大変だ。思わず妻の手を握り人混みの中を歩いた。妻も不安だったのだろう。しっかりぼくに寄り添っている。特に何か目的があったわけではない。境内をただ歩き、屋台をのぞいた。人混みから抜けた時はほっとした。その祭の夜を詠んだのが冒頭の句である。

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境内の春弾けをり終の寺

境内の梅の花は既に満開。隣の夏蜜柑の黄色とマッチして春を演出している。枝の間からは本堂が垣間見える。この寺は、真言宗智山派の延命寺。縁起のいい名前の寺だ。川崎駅から歩いて10分ほどの距離にある。江戸時代に造られた寺院だ。境内は静かで良く手入れがされている。時期になれば見事に咲くであろう紫陽花がすでに小さな芽をつけている。延命寺という同じ名前のお寺は関東にいくつもある。鎌倉の材木座にもあるし、逗子にもある。逗子の延命寺は天平時代に創建されたと伝えられているから歴史が古い。延命寺関係で一番有名なのは、荒川区にある延命院だろう。こちらは日蓮宗の寺院で八百屋お七縁の寺として知られる。