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光悦垣樋(とい)の先より五月雨るる

小山 正見

光悦寺!京都である。ところが、この日は土砂降り。
「大花野の会in京都」の会場を提供してくださったOさん夫妻に大変お世話になった。
まずご主人が宿まで迎えに来てくださり、ぼくを光悦寺まで車で連れて行ってくださった。
光悦寺は、江戸時代初期に活躍した本阿弥光悦ゆかりの寺である。竹で組んだ独特の菱形の垣根が「光悦垣」として名高い。鷹峯三山が雨のもやの中で幻想的に見える。青い楓の葉に雨粒が宿り、樋からは雨水が流れ落ちる。庇のある一隅で五月雨を眺めながら、ぼくはOさんに京都のことを色々教えていただいた。Oさんは、数年前に関東から京都に戻ったとは言え、生まれも育ちも京都の方だ。すでに、地元の神社の総代を務めていらっしゃる地元の名士である。
ぼくの方は、問われるままに俳句の魅力的などを語ったが、初対面でこんなに気さくに話せる方にお目にかかったのは久しぶりだ。
Oさんご夫妻は、夜には穴場とも言える京料理の店に案内してくださった。
「西陣齋阿うん」という店だ。
http://www.sei-aun.com/
好き嫌いの多いぼくが、何一つ残さず、全ての料理を「うまい、うまい」と思いながら食べた、和食がこんなに美味いと思ったことは正直言って初めてだった。
次の日にご一緒に講座を担当する高橋さん、藤井さんと和気藹々と言葉を交わせたことも楽しかった。
夜は船岡温泉の湯に浸かった。船岡温泉は西陣のど真ん中にある銭湯だ。1923年に開業し、日本で最初に電気風呂を導入したとされている。女湯と男湯を隔てる欄干には上海事変の透し彫りが飾られている。銭湯なのに、電気風呂ばかりか、サウナから露天風呂、檜風呂まで揃っているから驚きだ。渡り廊下の下は風雅な池になって錦鯉まで泳いでいる。昭和初年のようなレトロな空間だった。一方、客には見事な彫物を背中や腕を飾っている若者も多かった。
とにかく刺激的な温泉であることは間違いない。
昼から続いた土砂降りは温泉を出るとようやく止んでいた。
京都の充実した一日が終わった。