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『青波』の余韻七月終わりけり

小山正見

封筒が届いた。田中拓也先生からである。中身は歌集。先生の最新の歌集『青波』だった。
田中先生とお目にかかったのは、江東区時代である。
記憶は定かではないがコロナの前だったと思う。確か、先生は都立城東高校で教鞭を取られていたはずだ。
一回学校俳句研究会の集まりにおいでになったことがある。
次にお目にかかってのは、立川にある都立立川国際高校附属小学校での授業の際だった。先生は国際高校へ転勤されていた。そして、授業を見に来てくださったのだ。
先生の歌集『青波』には、コロナ下を含むこの5年の作品が収録されているが、先生はその間に、お父様、お母様を亡くされ、そのテーマが歌集の中心にあった。
生々しい現実と著者の心の葛藤が迫ってくる。

もう何も食べない父の脇に立つリュックサックを床におろして
まだ閉じぬ父の瞼に触りたり霊安室の静けさの中
現世の父と別るる一日なり 九月十五日空晴れわたる

終章のごとき家族の時間なりふたりで食べているあんぽ柿
生きすぎた生きすぎたよと繰り返す母の言葉が低く響きぬ

三万三千余日を生きてひっそりたった一人で母は逝きたり
一人きりベッドの上で誰のことを思っていたか今際の際に

歌集は、

汚れたる雪の積まれし側道に光さしこむ一処あり

の歌で終わっている。