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この先は進入禁止五月尽

小山正見

明日から六月だというのに、寒い一日だった。半袖の子がいる一方、ダウンを着込んでいる人もいる。
進入禁止の道路標識を見て「自分の人生で前を塞がれたことがあったか?」と振り返ってみた。
高校の受験は一校だけ受けたが、無事に合格した。背伸びしなかったからだろう。
大学も浪人せずに入学した。教師になるつもりもなかったのに、教育学部に入った。入りさえすればどこでもよかったのだ。
授業には碌に出なかったのに、四年で卒業できた。最小限の単位しか取っていなかった。要領は良かったのだろう。
それでも結局教師になり、24歳で結婚した。30歳で子どもが産まれ、45歳で教頭になった。50歳で校長になり、12年間勤めあげた。その後10年以上俳句教育に従事し、2年前に江東区教育委員会から身を引いた。
こう経歴を見て行くと、そこそこに順風満帆の平凡な人生が見えてくる。
もし、一つだけ問題を挙げるとすると、30代後半に「教師を辞めよう」と悩んだことだ。
なぜ仕事が上手く行かないのかと真剣に悩んだ。その度に心が揺れ、そして荒れた。人生論や精神分析などの本を読み漁った。
その時に自分を救ってくれたのは、妻の言葉と行動だった。
妻は「私は自分で決めたことは後悔しないの。」と言い、何一つ不平を漏らさなかった。妻の姿勢を見ながら、前を向き、すべきことをすればいいのだということが朧げながらわかってきた。自分に目を向けるのは甘えでしかないと自覚するようになった。
現在のぼくがいるのは妻のお陰だと思っている。
今のぼくの最大の悩みは、明日の結社の句会に出す俳句ができていないことだ(笑)
明日から六月、「なぜぼくは俳句ができないのか」などと悩んでいるいる暇はない。