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カプセルの中身は何ぞ地虫出づ

小山正見

何やら工事が始まっている。元住吉駅のすぐそば、青山フラワーマーケットの目の前だ。
かつてセキモト写真店のあった場所である。ずっとシャッターが閉まったままだった。
「何ができるんだろう」
興味津々で毎日眺めていた。看板が付いて、いつの間にか開店している。
「カプセル薬局」
とある。
「なんだ、また薬屋か」
とがっかりしていたが、様子がおかしい。
「この風景、どこかで見たことがある」
新宿サブナードの地下にもあった。ゲームセンターの中でも見た、あのカプセルトイだ。
店の中に店員は一人もいない。カプセルトイの白い箱が並んでいるだけだ。
2階にも上がってみた。ぎっしりと白い箱が並んでいる。上にバラエティとかキッズ、いきものなど看板が掛かっている。大雑把に分類がされているようだが、ぼくにはさっぱりわからない。
アクセサリーやミニチュアの模型が入っているのだけはわかる。
「ぼくには縁がない」
と思って外に出た。
家までの道を辿りながら考えた。
我が家はミニチュアの家系だということに思い当たった。
祖父の小山潭水は盆景の家元だった。盆景は景色を水盤の中に再現する芸術だ。我が家には、まだ点景物と呼ばれるミニチュアの建物や人形が残されている。
父正孝もミニチュアの収集に余念がなかった。
真夜中に収集したそれらのものを並べて物語を空想したらしい。
次のような詩も残している。

 机の上   小山正孝

机の上に虫籠を置いた
虫籠の中に小型の椅子を入れた
椅子は指先で安定させるには時間がかかつた
その椅子に小さな姿の僕を坐らせた
自分を見つめてゐて一時間もたつたらうか
疲れたので僕は椅子と虫籠を片づけた
我にかへつて現在僕のゐる書斎が虫籠であることに気がついた
今度この僕をとり出してくれるのはどなただらうか
自分で自分に敬語をつかふのはをかしいかなと考へた
それにしてもどんどん夜は更けて行く

ぼくはミニチュア好きの家系を継承していないつもりでいた。
しかし、考えてみると、ぼくも「俳句フォト」という「虫籠」の中にいるのかもしれない。