俳句フォトエッセイ2025.10.09何事も無きかの如く曼珠沙華小山正見今年も曼珠沙華が咲いた。しかし、例年より遅い。曼珠沙華は別名彼岸花と呼ばれる。お彼岸の時期に丁度花盛りになるからだろう。「十日の菊」ではないが、お彼岸に間に合わない彼岸花は少々魔が抜けているように思う。しかし、曼珠沙華の方はそんなことお構いなしだ。秋空に赤い花を輝かせている。突き抜けて天上の紺曼珠沙華 山口誓子を知ったのは俳句を学び始めてすぐの頃だ。実に巧みな描写だ。紺に対比される曼珠沙華の赤が鮮やかに浮かびあがる。(書いてないのに!)歯切れが良く格調がある。すっかり気に入った。森澄雄の西国の畦曼珠沙華曼珠沙華も好きだ。にも関わらず、ぼくは曼珠沙華という花を好きになれない。なんとなく不気味だからだ。赤の色さえ不吉に思えてしまう。死人花という別名の方がピントくるほどだ。赤白を揃へて妖し曼珠沙華 正見と詠んだこともある。そんなわけで各地にある曼珠沙華の観光名所には行く気になれない。それでも曼珠沙華に関してすごく好きなこともある。山口百恵が歌った「曼珠沙華」である。こう書いて「まんじゅしゃか」と読ませる。この読み方はサンスクリット語だそうだ。作曲は宇崎竜童、作詞は阿木燿子である。ぼくはこの歌を門倉有希のカバーで何百回となく聴いた。涙にならない悲しみがある事を 知ったのは ついこの頃の歌詞で始まる失恋の歌だ。門倉有希は昨年6月に50歳で他界した。自称ファンだったぼくにとっては曼珠沙華は、さしずめ門倉有希を哀悼する花である。
今年も曼珠沙華が咲いた。しかし、例年より遅い。曼珠沙華は別名彼岸花と呼ばれる。お彼岸の時期に丁度花盛りになるからだろう。
「十日の菊」ではないが、お彼岸に間に合わない彼岸花は少々魔が抜けているように思う。
しかし、曼珠沙華の方はそんなことお構いなしだ。秋空に赤い花を輝かせている。
突き抜けて天上の紺曼珠沙華 山口誓子
を知ったのは俳句を学び始めてすぐの頃だ。実に巧みな描写だ。紺に対比される曼珠沙華の赤が鮮やかに浮かびあがる。(書いてないのに!)
歯切れが良く格調がある。すっかり気に入った。
森澄雄の
西国の畦曼珠沙華曼珠沙華
も好きだ。
にも関わらず、ぼくは曼珠沙華という花を好きになれない。なんとなく不気味だからだ。赤の色さえ不吉に思えてしまう。死人花という別名の方がピントくるほどだ。
赤白を揃へて妖し曼珠沙華 正見
と詠んだこともある。
そんなわけで各地にある曼珠沙華の観光名所には行く気になれない。
それでも曼珠沙華に関してすごく好きなこともある。
山口百恵が歌った「曼珠沙華」である。こう書いて「まんじゅしゃか」と読ませる。この読み方はサンスクリット語だそうだ。作曲は宇崎竜童、作詞は阿木燿子である。ぼくはこの歌を門倉有希のカバーで何百回となく聴いた。
涙にならない悲しみがある事を 知ったのは ついこの頃
の歌詞で始まる失恋の歌だ。
門倉有希は昨年6月に50歳で他界した。
自称ファンだったぼくにとっては曼珠沙華は、さしずめ門倉有希を哀悼する花である。