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春一番てんとう虫の動き出す

小山正見

先月、東高根森林公園を紹介したら、読者から「ここもいいわよ」と教えていただいたのが南野川ふれあいの森だ。
 スマートフォンで行き方を調べ、横浜を走る地下鉄グリーンラインの東山田駅から歩くルートで向かった。
 駅を降り、ひたすら住宅地の間を歩く。途中にお店もコンビニも見当たらない。中学校のグラウンドでは、野球の試合やサッカーの練習が行われている。
 よく整備された公園を横切って坂道を下ると有馬川の細い流れに出た。この川を渡ると、ようやく川崎市宮前区に入る。
 ふれあいの森は急坂を上り切ったその上にあった。疲れて思わずベンチにへたり込む。
 春一番の強い風が幹を揺らしている。風の音だけが森を通り抜ける。
 リュックを背負った老人に出会った。この森でゴミ拾いをしているという。たばこの吸い殻などを淡々と集めている。
 「リハビリを兼ねた散歩ですよ」と謙遜するが、この森はこうしたボランティアの方々の努力で支えられているようだ。
 「森で遊ぼう、森を学ぼう」を合言葉に月2回活動を行っている「野川はあも」というボランティア組織が森を守っているのだという。
 そういえば、会の活動を記したてんとう虫の形の掲示板が印象的だった。春になり「野川はあも」の活動も本格化していくのだろう。
 遊歩道が整備され倒木も片付いている。森に入ると風の音がさらに大きくなる。森全体が揺れている。鋭い鳥の声が聞こえてくる。何だか深山にでも迷い込んだような気分になった。
 風の音を聞き、春の陽(ひ)の暖かさを感じているうちに、いつの間にか時間が過ぎた。
 振り返ると、てんとう虫の掲示板が春の暖かい陽を浴びていた。

東京新聞川崎版3/1「小山正見のかわさき俳句フォト」