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歩み行く 大山街道 秋高し

小山正見

 川崎に長年住んでいるのに「大山街道」について、何一つ知らなかった。知ったのはNHKの「ブラタモリ」、三軒茶屋編を見たからである。
 大山街道は東京・赤坂から神奈川県伊勢原市の大山を結ぶ。全長は約70キロ。大山は標高1252メートル。雨降山ともいわれ、大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)のある信仰の山だ。
 江戸時代の中期には「大山詣(まい)り」が大流行し、二子や溝口の宿場は大いに栄えたらしい。江戸時代の旅行はなかなか許可が下りなかった。しかし、神社仏閣への参詣は大目に見られたようだ。
 「お伊勢参りまではできないが、大山ぐらいまでなら」といったところだろう。帰路は江の島や鎌倉で遊んで帰ったというから、お上の目をうまくかいくぐったものだ。
 調べたら「大山街道ふるさと館」があることが分かった。早速、出かけた。
 「ふるさと館」は武蔵溝ノ口駅から7分ほど。溝口神社からも近い。かつての高津村役場のあった場所に1992年、川崎市制70周年記念事業の一環として建設された。
 内部には吹き抜けの空間を設け、あたかも街道を歩いているかのように感じさせる仕掛けになっている。実におしゃれな構造の建物だ。建築家として高名な富永譲の設計である。彼はル・コルビュジエやモダニズム建築の影響を受けた建築家だが、同時に歴史的な街並みとの調和をも心掛けたという。
 「ふるさと館」では、10月26日まで「岡本和泉 大山街道スケッチ紀行」展が開催されている。現在の大山街道の様子が実によく分かる。街道沿いには、昔からの商家がいくつか残っている。中には何代も続いているお茶屋さんもあった。
 江戸の後期の大山街道は駿河のお茶やさまざまな物資を江戸に運ぶ重要な輸送路でもあったのだ。
<おやま・まさみ> 1948年川崎市生まれ。東京都江東区立八名川小学校長などを歴任。子どもたちが俳句に親しむための授業に取り組み、日本学校俳句研究会代表。「梓」俳句会同人、現代俳句協会会員。川崎市中原区でコミュニティースペース「感泣(かんきゅう)亭」を主宰。WEBサイト「みんなで楽しむ俳句フォト」でも情報を発信している。

10/12付東京新聞川崎版「小山正見のかわさき俳句フォト」です。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/442075