【初心者歓迎】俳句フォトの会 会員申込はこちら

秋の水羽を震はす鳩の群

小山正見

季語でいう「秋の水」とは、本来きれいで澄み切った水を指す。夏の間はプランクトンなどの微生物が繁殖して、水は濁っているが、秋になると水温が下がる。微生物の繁殖も下火になり、水が澄む。こうした現象を元にした言葉が「秋の水」という季語だ。
「水の秋」とひっくり返せば、そうした美しい水をたたえる秋という意味になる。
日本語の不思議は言葉に情緒が結びついていることだ。
同じ風でも「春風」と言えば何となくうきうきする。逆に「秋風」と言うとほのかな寂しさとか悲しさが感じられる。俳句がたった十七音で詩になり得るのは、こうした日本語の特徴によるものかもしれない。
鳩が羽を震わしているのは、実は水浴びをしているからだ。
写真だけではわからないが、噴水の水が上から落ちてきているのだ。
ぼくは鳩に親近感を持っている。子供の頃、家の庭に鳩舎を作り飼っていたからだ。
今ならとても不可能だろうが、近くに大きな鳩舎があり、夕方になると数十羽が空を舞った。それが羨ましかったのだろう。電気屋さんからもらってきた家電の木枠に金網を張って、鳩小屋を作り上げた。トラップという名前の入口(外からは入れるが中からは外に出られない)を作り、見様見真似で鳩の訓練をした。鳩の餌にも凝った。とうもろこしを主体に小麦や麻の実、胡麻などを合わせて配合した。生き物を飼うことは糞を処理することだと身に沁みた。
結局、全ての鳩を死なせてしまい、ぼくの鳩体験は終わりになった。
鳩を見ると、コキコキと鳴る鳩の羽音と手に持った時の感触を思い出す。