俳句フォトエッセイ2026.05.21菖蒲湯の長閑句会の帰り道小山正見【銭湯紀行】その9武蔵小杉 今井湯連休の真っ最中の句会だ。名前は「椿句会」という。もう3年も前になるが、中心になっていたNさんに「指導」を頼まれた。それまで、椿句会を指導されていたK先生が、ご高齢で参加が難しくなったためだ。ちょうど江東区を退職したばかりで、時間のゆとりもあった。参加者が10人に満たない小さな句会だが、メンバーが少しずつ入れ替わりながら続いている。Nさんは、椿句会の伝統をしきりに口にされていた。確かに、今回で641回である。月に一回の句会ならば53年余ということになる。今から53年前と言えば1973年だ。ぼくが教職についた頃である。どのような方が始められたのか想像するしかない。武蔵小杉から帰宅の途中に今井湯はある。元住吉とのちょうど中間点だ。この銭湯の歴史も古いが、リニューアルを繰り返しながら生き延びている。かつては元住吉に数多くあった銭湯も、今はここだけだ。サウナのほかに、炭酸泉やジャグジー風呂があるのが、この銭湯の売りだろう。ぼくはまだ利用したことがないが、朝7時からの朝風呂もある。この日は菖蒲湯だった。大きな袋に詰め込まれた菖蒲が浮いていた。ほのかな香りが漂ってくる。お父さんに連れられて幼い子が袋の中の菖蒲の数を数え始めた。「1、2、3……」32まで数えたところで「33以上ある!」お父さんとのやりとりが何とも可愛かった。句会を終えた安心感もあったのか、ぼくはぬるめの炭酸泉に心いくまで浸り、家路についた。長閑な連休もそろそろ終わりだ。
【銭湯紀行】その9
武蔵小杉 今井湯
連休の真っ最中の句会だ。名前は「椿句会」という。もう3年も前になるが、中心になっていたNさんに「指導」を頼まれた。それまで、椿句会を指導されていたK先生が、ご高齢で参加が難しくなったためだ。ちょうど江東区を退職したばかりで、時間のゆとりもあった。参加者が10人に満たない小さな句会だが、メンバーが少しずつ入れ替わりながら続いている。
Nさんは、椿句会の伝統をしきりに口にされていた。確かに、今回で641回である。月に一回の句会ならば53年余ということになる。今から53年前と言えば1973年だ。ぼくが教職についた頃である。どのような方が始められたのか想像するしかない。
武蔵小杉から帰宅の途中に今井湯はある。元住吉とのちょうど中間点だ。
この銭湯の歴史も古いが、リニューアルを繰り返しながら生き延びている。
かつては元住吉に数多くあった銭湯も、今はここだけだ。
サウナのほかに、炭酸泉やジャグジー風呂があるのが、この銭湯の売りだろう。ぼくはまだ利用したことがないが、朝7時からの朝風呂もある。
この日は菖蒲湯だった。大きな袋に詰め込まれた菖蒲が浮いていた。ほのかな香りが漂ってくる。
お父さんに連れられて幼い子が袋の中の菖蒲の数を数え始めた。
「1、2、3……」
32まで数えたところで
「33以上ある!」
お父さんとのやりとりが何とも可愛かった。
句会を終えた安心感もあったのか、ぼくはぬるめの炭酸泉に心いくまで浸り、家路についた。
長閑な連休もそろそろ終わりだ。