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エッセイ

俳句フォトエッセイ

爽やかや佐伯誠の手紙展

台風の雨が激しい。会場は、田園調布と自由が丘の間にある「スペースengawa in」である。ここは、ぼくにも懐かしい場所だ。妻と一緒の散歩でよく立ち寄った。緑に囲まれた庭をもつ民家、素敵な空間だ。佐伯誠さんがこの場所をこよなく愛していたことを初めて知った。荒天にも関わらず、会場には30人を超す人々が集まっていた。壁には、佐伯さんが生前に送った手紙や葉書、ファックスの類がこれでもかとばかり展示されていた。単なる手紙なのに、そのどれもが美しい。字に味があり、それにちょっとしたイラストが添えられている。佐伯さんは、ポップな才人なのだ。

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新緑の下なる時間つぶしかな

若干暑いが、それでも5月らしい気持ち良い天気の日が続いている。某小学校での俳句の授業が終わってから、妻の入居しているグループホームに向かった。このグループホームにお世話になってもう5年半を過ぎる。幸せなのは、良いスタッフに恵まれたことだ。病気の進行は仕方がないし、人も選べない。入居に当たってたくさんのホームを見学・比較したわけでもない。運としか言いようがないが、明るくて穏やかで面倒見が良いスタッフがこのホームには大勢いた。しかも、そのスタッフが継続して勤務してくれている。有難いことだと思わざるを得ない。もう一つ良いことがあった。面会がほとんど制限されなかったことだ。

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ガチャガチャに長き列あり春の朝

「ガチャガチャ」とはカプセルトイのことだ。ハンドルをがガチャガチャ回すと中の商品が出てくるので、「ガチャガチャ」と呼ばれるのだろう。我が家では殺虫剤のことを「しゅーしゅー」と呼んでいたことを思い出した。カプセルトイの歴史を辿ると、元々はアメリカが発祥の地で、ガムが出てくる子ども向けの装置だったらしい。それが日本に入ってきて、大進歩した。今では大人が夢中だ。元住吉に「ガチャガチャ」の店ができたことは、以前のエッセイで述べた。「カプセル楽局」。「薬局」だとばかり思っていた。間違えたのはぼくだけでなく、実際に処方箋を持って訪れた人もいるらしい。

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店頭に閉店の文字年果つる

「閉店」。しかもよく見ると「完全閉店」とある。この場所には二度と開店しない意味かと思ってしまう。閉店は1月4日だが、2月の終わりには近くのビルの中に店を出すというのだから完全撤退でもなさそうだ。男物のスーツのチェーン店AOKI武蔵小杉店である。男物スーツは売れなくなったのかと思ったが、調べてみるとそれほどでもなさそうだ。元住吉の駅前の一等地にもスーツセレクトがある。一時より随分需要が減ったとしても、洋服の青山、AOKI、スーツセレクトなどのチェーン店は健在と言えよう。ぼくが初めてブレザーを着たのは大学に入った年だ。スーツは就職した時に作った。

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ポインセチア平和の赤を誇りをり

12月の色と言えば、赤だ。赤はサンタクロースの服の色だし、赤鼻のトナカイの赤でもある。サンタクロースの服は、何故赤なのか?諸説ありそうだが、サンタクロースの原型と言われる聖ニコラウスが当時赤の祭服を着ていたことに由来するという説が一般的である。とは言え、19世紀までは、サンタクロースの服は結構様々で、緑や青や白もあったらしい。それが決定的に変わったのは1930年代のコカコーラの宣伝からだと言う。画家ハッドン・サンドブロムの描くサンタクロースは、親しみやすく赤で白い縁取りの服を着ていた。この絵がゲームチェンジャーとなり、サンタクロースの赤い服は世界に定着した。

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さざんかの咲き急ぎまた散り急ぎ

さざんかは冬の花である。垣根にもよく使われているので、通勤途中に見ておられる方も多いと思う。都内では、江東区や杉並区、清瀬市がさざんかを区や市の花に指定している。年配の方なら大ヒットになった大川栄策の「さざんかの宿」を覚えておられるだろう。さざんかは、見たところ椿とそっくりだ。もちろん詳しい人なら花や葉っぱで見分けることができるが、素人には難しい。一番易しい見分け方は花の散り方、落ち方である。椿は花ごとポトリと落ちるのに対して、さざんかは花びらが一枚一枚散るのである。さざんかは漢字では「山茶花」と書く。違和感を覚えないだろうか?普通に読めば「さんざか」ではないか。実はその通りなのだ。

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振り向けば石蕗の花の黄そこに在り

「石蕗」(つはぶき)と書いて、「つは」とも読む。鮮やかな黄色の花だ。花が少なくなる冬に咲く。鮮やかな黄色なのに、静かで控えめな感じがするのは、ぼくだけではないだろう。いかにも、振り返ったら、そこにあったというような風情なのだ。一つには、石蕗の花が日陰や半日陰の土地を好むからであろう。表通りというより、どちらかと言うと裏通りが似合う。多くの花が外国由来だが、石蕗の花の原産地は日本である。九州では、昔石蕗を食用にしたとの記述が牧野富太郎博士の『牧野日本植物図鑑』にあるらしい。茶道では客を茶室に導く露路に植える代表的な花の一つとされる。茶花として茶室に控えめに活けられることも多い。

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冬うららかつてありける貸本屋

元住吉の裏通り。この場所に貸本屋があった。いつなくなったかは記憶にない。小学生から高校生にかけて、ぼくはここの古本屋に通い続けた。1日10円、延長料金は1日5円だった。印象に残っているのは、まず白土三平だ。それがカムイ伝だったかどうかは定かではないが、白土三平だったことは確かだ。次はさいとうたかおである。これもゴルゴ13だったかどうか。人間の記憶というものは、相当に不確かである。ハードボイルドの劇画は刺激的だった、ぼくはこれらの本を学校に持って行ったらしい。母は担任の先生に呼び出され、「小山君が変な本を学校に持ってきて困る」と言われたようだ。その辺りの記憶はぼくにはない。

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駅前の音楽隊もクリスマス

俳句では「も」という助詞は嫌われる。「も」というのは書かれていない別のものもあるということだから、曖昧になったり、もしくは主役を奪われることもあるからだ。それは兎も角、この写真は東急線元住吉駅前にあるブレーメンの音楽隊の像である。西口のブレーメン商店街を象徴している。商店街のイルミネーションも輝き、街は既にクリスマスムードだ。クリスマスは、元々キリスト教の行事だけど、一部の信者さん以外、それを意識している人はほとんどいないだろう。日本の商売人は仕掛けがうまい。平賀源内の昔からそれは始まっている。ご存知「土用の鰻」。本当は鰻は冬場が食べどきだそうだ。従って、夏場は売れない。

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大量の苺大福五平餅

もう遅い時間だというのに、売店の苺大福と五平餅は、両方ともかなり売れ残っているように見える。「大丈夫なんだろうか?」ひとごとながら心配になってしまう。そこで思い出した。俳句フォトエッセイの第一号は、桜餅の俳句だったことを。遂に出た苺大福専門店正見商店街に「苺大福」の幟旗が立ったのを見て、口ずさんだのがこの句である。苺大福と同時に革新和菓子について書いた。確か一年ぐらい前だった。調べてみたら2月23日だった。俳句フォトエッセイを書き始めて、一年間がすでに過ぎたということだ。よく続いたものだ。