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只一度祝ひし三日誕生日

小山正見

不意にスマートフォンの画面に7年前の1月3日の画像が出てきた。
2019年の1月3日である。写真の場所は横浜、山下公園の前にあるホテルニューグランドのレストランである。
戦後進駐軍に接収され、マッカーサーが滞在したことで歴史的建造物となったあのホテルだ。
山下公園への散歩の途中、3日が妻邦子の誕生日だったことを思い出し、少し豪華な昼食をとることにしたのだ。
記憶をどう辿っても、この年以外妻の誕生日を祝った覚えがない。「何と冷たい!」と思われそうだが。

我が家には、誕生日を祝うという習慣がなかった。
ぼくの誕生日が1月2日、そして妻の誕生日が1月3日。お正月と重なっているのが理由の一つには違いない。がそれだけではない。本当の誕生日は更に異なるのだ。ぼくは前年の12月26日。妻は12月28日だ。
数えで言うと生まれた時が一歳、お正月が来ると一つ年を取るという考えだから、生まれて数日で二歳になってしまうことになる。「それはかわいそうだ」と考えて、誕生日の届出を遅らせたらしい。(今なら不可能だろう)
そんな訳で二人とも誕生日にあまり執着がなかったことも背景にはあったような気もする。
自分の生育史の中でも誕生日は希薄だった。一人っ子で可愛がられて育ったはずなのに、誕生会をしてもらった記憶がない。
だいたい、父や母の誕生日についても、覚えたのは大人になってからだ。
我が家のDNAの中に「誕生日」は存在していなかったのかもしれない。

だとは言え、誕生日はいいものだ。
この写真でぼくは7年前のこの日のことを鮮明に思い出す事ができた。
妻の嬉しそうな顔が微笑ましかった。この後、ぼくたちは山下公園で鴎に囲まれた。確か、その後シーバスで横浜に向かったはずだ。陽射しの暖かい1日だった。