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夏兆す元住吉の空の色

小山正見

よく寝ているはずなのに朝から体が重い。歳のせいかもしれないが、もしかしたら気候のせいかもしれない。空は晴れていても梅雨が近いのだ。
だるくても動き出すとそれなりにどうにかなる。
勇気を振り絞って出かけることにする。元住吉駅のエレベーターは長い。いつもは、右側を歩いてのぼることにしている。じっと待っているのが耐えられないし、多少は運動になるからだ。しかし、今日はそれもカッタルイ。
ぼくの記憶では、元住吉の駅は3代目だ。
ぼくは、小学校一年生の時から東横線に乗って通学した。まだ、改札口で駅員さんが切符を切っていた時代だ。切符を切る手捌きもそうだが、一瞬で定期の期限切れを見つける眼力にも驚愕した。
車内放送の「各駅停車」を「各駅電車」と思い込んでいた。もう一つ思い出したことがある。電車の中で痴漢にあったのだ。何年生の時だったろう。局部を握られ次の駅で慌てて降りた。この歳までその時の感触を覚えているのだから、相当にショッキングな出来事だったのだろう。
まだ多摩川園遊園地が健在で、菊人形やお化け屋敷を楽しみにしていた。
元住吉の駅前には、トイレの匂いが漂ってくるような映画館もあった。
二代目の駅は、一旦地下に潜って改札を潜り、地上のホームへ上がるようになっていた。随分と近代化された印象があった。1961年のことだ。この時はまだ自動改札ではなかった。ぼくは、1966年に大学に入り元住吉を離れた。
現在の駅舎ができたのは、2006年のことである。線路が高架になり、太陽光発電パネルも取り付けられた。もちろん改札は自動化されていた。駅の屋根がテント地の鳥の羽のようで実にお洒落になった。
その屋根の間から空がのぞいている。空気は重いが、空の色はすでに夏に傾いているかのようだ。