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夜の秋本屋は何でもマーケット

小山正見

「夜の秋」とはよく言ったものだ。風があると夜はそれなりに涼しい。
高浜虚子に「夜の秋を感ずる肩のあたりかな」の句がある。
先日、用事があって川崎駅にある本屋、有隣堂に行った。大きな本屋の中を歩くのは久しぶりだ。
驚いた。本屋だから商品の大部分は「書籍」であることに違いはない。
しかし、それだけではない。
入口の辺りには「香り」のコーナーがあり、各種のお香が並べられていた。写真の左下にあるのは万年筆だ。
右上のビジネス書の棚にかかっているのはペンケースとスタンプである。バッグや小物入れまで売っている。レジの前にはビスケットやピーナッツまであった。手拭いやフィギュア、折りたたみ傘も(笑)流行りのカードゲームもある。何でも売る気満々だ。こうでなければ、今の本屋はやっていけないということだろう。
ぼくにとっての「本屋の原点」は貸本屋だった。TSUTAYAの漫画コーナーと思っていただければよい。1日10円。延長すると1日5円プラスという仕組みだった。
白土三平の「カムイ伝」も手塚治虫の「火の鳥」もここで読んだ。
もちろん漫画ばかりではない。江戸川乱歩の名探偵明智小五郎シリーズや怪盗ルパンも  貸本屋で借りた。講談本も読み漁った。
ある時は従兄弟に無理やり頼まれてエロ本を借りてきたこともある。今考えるとよく貸してくれたものだが、子ども心にドキドキしたのを覚えている。
それにしても、よく本を読んできたものだ。
残りの人生があと10年と見積もって、あと何冊本を読むことができるのだろう。